生誕60周年!今こそ読みたい杉浦日向子のオススメ江戸マンガその1「百日紅」

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生誕60周年!今こそ読みたい杉浦日向子のオススメ江戸マンガその1「百日紅」

杉浦日向子さん。「江戸」を少しでもかじったことのある方なら、誰しもが彼女の名をご存知でしょう。

お江戸マンガを描かせたら右に出る者なしのマンガ家でありエッセイストであり、日本を代表する江戸風俗研究家であった杉浦さん。若くしてこの世を去った彼女ですが、昨年11月に生誕60周年の節目を迎えられました。

今回はそんな記念すべき節目の年を祝して、名作ばかりの中からオススメのマンガ作品「百日紅(さるすべり)」をご紹介します。

百日紅 (上)

あらすじ

葛飾北斎の娘の中で唯一絵師として筆を握り、父の手足となった葛飾応為。近年脚光を浴びている応為ですが、「百日紅」は彼女を主人公に据えた最初のマンガ作品ではないでしょうか。主人公のお栄(応為の本名)は父である葛飾北斎と共に江戸下町の長屋暮らし。

二人を中心に、弟子の池田善次郎(のちの人気絵師・渓斎英泉)をはじめ、クセの強い浮世絵師たちの日常から生まれる怪談話、艶話、滑稽話、人情話の数々。ほとんどが1話完結の短編形式の作品です。

何がすごいって、画面の描き込みがすごい

何がすごいって、画面の描き込みがすごいんです。

破れた壁、火鉢、煙草盆、硯、絵筆、描き損じの山・・・「日向子サン、さっきまで北斎の長屋に居たンでしょう」と言いたくなるほどの緻密な風俗描写。

出典:百日紅

1作品読み終わる頃にはアナタも江戸風俗ツウになってしまっているかもしれません。

百日紅 (下)

ロングセラーのワケは「等身大の江戸ッ子」

本作品は、お栄が父・北斎を目指して苦難を乗り越え絵師として成長する・・・というような分かりやすい青春熱血マンガではありません。にもかかわらず長年愛され続けているのは、江戸ッ子流の「意気地(いきじ)」や「艶(つや)」、更には「諦観」がそこにあるからでしょう。少女マンガの主人公みたいな上昇志向やキラキラ感はないけれど、お栄にはお栄の意気地がある。

大成功して皆が羨む完璧な絵の巨匠なんかじゃなくて、北斎には北斎の諦観がある。映画みたいな大恋愛はないけれど、江戸の男女のニクい色艶がある。

そして彼らの感情をいちいちクドクド説明する事なく、読者に想像で読ませる俳句的な余白がある・・・。丹念に描かれる等身大の江戸ッ子の姿こそ、杉浦作品が大人に愛される大きな理由のひとつ。

ぜひ皆さんも、杉浦日向子ワールドにどっぷりハマってみてくださいね。

百日紅 (上) 百日紅 (下)

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