生誕60周年!今こそ読みたい杉浦日向子のオススメ江戸マンガその2「百物語」

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生誕60周年!今こそ読みたい杉浦日向子のオススメ江戸マンガその2「百物語」

杉浦日向子さん。「江戸」を少しでもかじったことのある方なら、誰しもが彼女の名をご存知でしょう。

お江戸マンガを描かせたら右に出る者なしのマンガ家でありエッセイストであり、日本を代表する江戸風俗研究家であった杉浦さん。若くしてこの世を去られた彼女ですが、昨年11月に生誕60周年の節目を迎えられました。

今回はそんな記念すべき節目の年を祝して、名作ばかりの中からオススメのマンガ作品「百物語(ひゃくものがたり)」をご紹介します。

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生誕60周年!今こそ読みたい杉浦日向子のオススメ江戸マンガその1「百日紅」

百物語とは

「古(いにしえ)より百物語と言う事の侍(はべ)る 不思議なる物語の百話集う処 必ずばけもの現れ出ずると」・・・。これは本作の冒頭に置かれた文章です。

百物語とは日本に昔からある怪談会の事です。やり方はさまざまですが、おおよそは以下の通り。

新月の夜、真っ暗な部屋に数人で集まって輪になり、怪奇話や不思議話を100話語ります。離れの奥の部屋には灯芯100本を灯した行灯があり、1話終わるごとに1人がその灯芯を1本ずつ吹き消しに行かなくてはなりません。奥の行灯の灯がだんだん暗くなり、最後の灯芯を吹き消して真の闇が訪れた時、必ず怪異が現れると言われているのです。

杉浦版・百物語は怖いけど怖くない!?

物語は1話につき8ページほどの短編が99話収められています。100話ではない理由は最終話に描かれています。怪奇話といっても、杉浦さんの描く「百物語」は悪意を持って人間に悪さをする妖怪話というわけではありません。どの話もどこか奇妙で薄気味悪く、でも根底に流れるのは人の抱える寂しさや切なさ、優しさや懐かしさだったりするのです。

例えばこの人の良い笑顔の女中さんの「ねこ」。

よく懐いている坊ちゃんがびっくりさせようと背後から押したら・・・。

この出来事の後も、ねこはニコニコしたいつものねこのまま。

坊ちゃんの身に何かが起こるわけでもありませんでしたが、坊ちゃんはなんとなくねこに近づきづらくなってしまい、最後には病を理由にねこが里に帰されてしまうというちょっぴり奇妙で切ない物語。ちょっと怖い、でも怖くない。このさじ加減が杉浦さんはものすごく上手いのです。

絵のチカラがすごい

そして、なんといっても杉浦さんの絵のチカラがすごいです。

例えば長持の中の女の子や、美しい女性のどアップなど、可愛いのに、綺麗なのに無条件にぞくっとしてしまう絵が多数です・・・。その他にも狐狸の類や天狗、仙人はもちろん、国芳が見たら大喜びしそうな化け蜘蛛も登場します。

杉浦さんは内容によって筆を変えており、毛筆だったり細い線だったり太い線だったり、非常に工夫されています。8年間にわたって丁寧に描かれた「杉浦版・百物語」、皆様もぜひその目で99話まるっとお確かめください!

杉浦日向子「百物語」新潮文庫

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