眠らせることで性能が向上するAIが開発される(イタリア研究)

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眠らせることで性能が向上するAIが開発される(イタリア研究)
眠らせることで性能が向上するAIが開発される(イタリア研究)

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 人間にとって睡眠は重要だ。いくつもの研究によって、それが人の健康や正常な機能を維持するために不可欠であることが示されている。

 脳にとってもしかり。眠りによって、起きている間に生じた不要なシナプス結合が取り除かれ、その健康が保たれる。

 この「シナプス恒常性(synaptic homeostasis)」とよばれる過程は、無駄な記憶のために脳の負荷が限度を超えてしまうことを防いでくれる。夢を見ている間に記憶が処理され、認知能力が改善しているらしいのだ。

 どうやらAI(人工知能)についても、眠って夢を見られるようにしさえすれば、似たようなことが起きるようだ。
・人工知能に睡眠機能を実装

 人工ニューラルネットワーク(ANN)は、生物学的な神経ネットワークをモデルにした人工知能の一種であるが、放っておかれたからといって自然と眠りについて、夢を見たりはしない。

 だが、イタリア・サレント大学の数学者アドリアーノ・バッラ氏は、哺乳類の脳に備わった睡眠と夢のメカニズムにヒントを得て、「ホップフィールド・ネットワーク」なるANNの一種に睡眠機能を実装した。

 人間の睡眠パターンには、レム睡眠とノンレム睡眠というサイクルがある。前者は不要な記憶を取り除き、後者は重要な記憶を固着すると考えられているものだ。
 
 バッラ氏は、このサイクルを数学的に実行する方法を考案し、オンライン時(覚醒時)に学習し、オフライン時(睡眠)に非学習・統合を行うメカニズムを開発した。

 つまり起きている間に学習を進めて、パターンを保存し、眠っている間に不要な情報を削除し、残された重要な情報を強化するようにしたのである。

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・睡眠させることでシナプスごとの保存容量が大幅に改善

 その結果は素晴らしく、睡眠がない場合には最大容量α = 0.14だったのが(αはシナプスごとに保存されたビット数)、睡眠を導入することで理論上の上限をα = 1まで引き上げることが可能になった。

 シミュレーションからもこの結果は裏付けられており、神経ネットワークにしばらく睡眠させることで、パフォーマンスを改善できることが示されている。

 「認知プロセスにおいて、学習と想起がきわめて重要な役割を果たしていますが、生物と同様に人工知能にとっても睡眠は不可欠だと考えます」とバッラ氏は話す。

 人工知能も夢を見るのだろうか?
 それはどんな夢なのだろう?
 
 この研究は『Neural Networks』で発表された。『arXiv』で全文を閲覧することができる。

written by hiroching / edited by parumo
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