人間男性の血液が乳白色に。一体何が起きているのか?(ドイツ)

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人間男性の血液が乳白色に。一体何が起きているのか?(ドイツ)
人間男性の血液が乳白色に。一体何が起きているのか?(ドイツ)

Image by Myriams-Fotos on Pixabay

 「お前の血は何色だ?」と問われれば、人間の場合「赤」と答えるのが正解だろう。だが、あるドイツ人男性から血液を採取したところ、赤から乳白色に変化したという。

 いったい何がおきているのだろう?

 結論から言えば、古代の治療法によって、男性は、からくも命を取り留めることができたという。

・血液には中性脂肪が大量に含まれていた

 ドイツ、ケルン大学病院に糖尿病を患った39歳の男性が来院した。患者は嘔吐をするほどの気分の悪さや頭痛を訴えており、意識も朦朧としていた。

 検査の結果診断されたのは、血液の中にトリアシルグリセロールが大量にたまってしまう、「高トリグリセリド血症」という病気だ——要は血液に中性脂肪がたっぷり入っていたのだ。

 通常、この病気に対しては、体内から血漿を抜き取り、そこに含まれる余分なトリアシルグリセロールを除去したうえで、綺麗になった血漿を体内に戻すという治療が施される。

 だが1つだけ問題があった。
 中性脂肪の量が半端ではなかったのだ。

 男性に血漿交換法を試してみたところ、血液が脂肪でドロドロになりすぎていて、機械が詰まってしまった!それも二度も!

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image credit:Koehler et al., Annals of Internal Medicine, 2019

・重症患者のさらに36倍の中性脂肪で血液が白くなる

 一般に、血液に含まれるトリアシルグリセロールが、デシリッターあたり150ミリグラムを超えると異常と診断される。

 これが200~499ミリグラムならば高いとみなされ、500ミリグラムにもなれば非常に高いと判断される。

 ところが、この患者のこってりドロドロした血液には、「非常に高い」の基準の36倍にあたる18000ミリグラムの中性脂肪が含まれていた。

 男性が訴えていた気分の悪さ、頭痛、意識の低下はいずれも、「過粘稠度症候群」という血液がドロドロになりすぎてしまったときの症状で、重症になるとてんかんを起こしたり、意識不明におちいったりする。

 この男性がこれほどまでの急性症状を発症したのは、糖尿病でありながら、あまり薬を飲まなかったことにくわえて、肥満、不摂生な食事、インスリン耐性、遺伝性の素因といったことが考えられる。

 そうした不健康な状態にあったところ、おそらくはケトアシドーシス(インスリンの欠乏による酸性血症)がきっかけとなって、連鎖的に症状が進んだのだと医師は推測している。

 そのとき男性の意識は、グラスゴー・コーマ・スケールで植物状態からかろうじて1ポイント高いだけの危険な状態であった。

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Image by stevepb on Pixabay

・3000年前の古代エジプトに存在した治療法を用いることに

 前代未聞の事態に医師は別の方法を考案しなければならなくなった。

 通常の血漿交換法が効かなかったために、苦肉の策として医師が採用したのは、18~19世紀以降には廃れてしまった治療法である「瀉血(しゃけつ)」だ。

 瀉血とは、体の血液を意図的に排出させるという治療法で、中世ヨーロッパや近代西洋諸国でさかんに行われ、古くは3000年前の古代エジプトにも見ることができるものだ。

 だが、今回の患者にはそれを試すしかなかった。集中治療室で2リッターの瀉血をしたうえで、さらさらの血液が輸血された。

 血も凍るような話であるが、この治療法はどうにか功を奏し、男性のトリアシルグリセロール濃度は低下。5日もすると元気を取り戻したそうだ。

追記(2019/03/07):
コメント欄によると、瀉血は現在も多血症の人などに行われるれっきとした治療法であるとのことでした。また、厳密に言うとこれは瀉血ではなく、交換輸血というそうです。

References:Bloodletting to Treat Severe Hypertriglyceridemia | Annals of Internal Medicine | American College of Physicians / A Man's Blood Turned So Thick And White, It Almost Killed Him/ written by hiroching / edited by parumo
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