第六感なのか?一部の人間の脳は地球の磁場を感じることができる(米研究)

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第六感なのか?一部の人間の脳は地球の磁場を感じることができる(米研究)
第六感なのか?一部の人間の脳は地球の磁場を感じることができる(米研究)

photo by istock

 地球から生じている磁場を移動のさいのコンパスとして利用する生物がいるのは周知の事実だ。

 たとえば渡り鳥やウミガメ、あるいは一部のバクテリアなどがそうで、彼らには天然のナビゲーションシステムが内蔵されている。

 では人間はどうだろうか?

 『eNuero』に掲載された研究によると、一部の人は無意識に地球の磁場を感じ取っているのだそうだ。
・暗闇のファラデーケージによる実験

 人間が磁場を感じられるかどうかというテーマは、かなり以前から熱心に研究されてきたが、はっきりとした結論が出せず、やがて下火になってしまったという経緯がある。

 アメリカ・カリフォルニア工科大学のジョゼフ・カーシュビンク氏らは、これ再燃させるべく、より高度な実験を行うことにした。

 被験者34名が参加した実験では、アルミ製の六面ファラデーケージが利用された。

 ファラデーケージとは、電気を通しやすい導体に囲まれた空間のことだ。実験でのケージは、正方形にコイルが組まれており、そこに流れる電流をコントロールすることで、自由に磁場を発生させることができた。

 ケージの中は完全に真っ暗で、木製の椅子が置かれており、壁には反響を防ぐための防音パネルが張られていた。

 被験者は、頭に脳波を測定するための電極64本を装着した状態で椅子に座り、この間に回転する磁場を発生させる。

 1回7分のセッションでは、2、3秒ごとに100ミリ秒磁場を発生させ、これが複数回1時間ほど行われた。


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・3割の人にアルファ波の低下を確認。特に強い反応を示す人は約1割

 参加者が暗いケージの中に座っている間、磁場が発生しているのかどうか誰にもわからない状態だった。

 にもかかわらず、4名(34名中)の脳では、最大半分もアルファ波が低下したことが観察されたのである。これは磁場という外部の刺激が脳によって処理されていたことを示している。

 カーシュビンク氏によると、この4名は特に強い反応を示していたが、参加者の3割程度に同じようなパターンが生じていたという。


・人によって磁覚の違いは様々

 このように参加者によって磁場への反応に違いがあったのは、人間の感覚の鋭さが個人個人で異なることと同じだと考えられる。

 たとえば、人の中にはワインを飲んで、それがフランスのどの地方で作られたものか言い当てられるほど、鋭敏な味覚の持ち主がいる。

 一方、ワインの味などどれも同じにしか感じられない人もいるだろう。

 同様に、磁場に強く反応できる人とできない人がいるのだろう。ならば、アルファ波の低下が弱かったからといって、そうした人は磁力を感じられないということにはならないはずだ。

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・磁場の向きに対する反応の違い

 参加者の脳は、磁場が水平に回転しつつも、下向きにおよそ60度に傾いているとき(北半球中緯度に似る)にだけ反応した。上を向いているときのように、磁場が”不自然”な向きになると反応しなかったのだ。

 カーシュビンク氏は、これも合理的なことだと考えている。

 こうした不自然な磁場の向きは、岩に落雷があったり、かなり広い範囲に磁鉄鉱があったりする場合に生じるもので、自然界ではそれほど珍しいわけではない。

 しかしこの磁場の変化は、いわば誤情報のようなものだ。ゆえに、ここを移動する動物は、これを無視できたほうが都合がいいかもしれないのだ。

 また不思議なことに、被験者の脳は時計回りに回転する磁場にしか反応しなかった。強く反応した4名に数週間後も同様の実験を受けてもらったが、やはり結果は同じだった。

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・人の脳が磁場を検出する仕組み

 研究チームは、こうした反応の非対称性ゆえに、磁鉄鉱結晶が関係しているという説に賛成している。これはヒザラ貝、バクテリア、ミツバチ、伝書バト、イルカなどで確認されているものだ。

 別の仮説として、目の中にあるクリプトクロムという青色受光タンパク質を生体磁気探知器として利用している(いわば量子コンパス)とする説もある。

 しかし今回の実験結果は、これを裏付けていない。というのも、量子コンパスは磁場の軸しか検出できず、両極性まではわからないはずだからだ。この仕組みでは、北を指し示す磁場と南を指し示す磁場を区別できないのである。

 一方、小さな磁鉄鉱結晶を含む特殊な感覚細胞があれば、今回の結果をすべて説明することができる。

 しかもこれは直接、生理学的データが得られているものでもある。なにしろ25年前、人間の脳から生体鉄鉱の結晶が分離されているのである。

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・磁場を感じる能力と方向感覚に関係は?

 今回の結果に関して、さまざまな疑問が浮かんでくる。

 はたして、磁力を感じる能力は人の方向感覚に影響を与えているのだろうか? 方向音痴の人とそうでない人の違いはもしかして、この力が関係しているのだろうか?

 これが人の行動に影響することはあるのだろうか? あるいは、訓練でこの能力を鍛えることはできるのだろうか?

 その答えは今後の研究を待つしかない。

 私は割とマジで方向音痴で、曲がりくねった道だとどちらが北なのかまったくわからなくなってしまうのだが、人によってはどこにいても咄嗟にその方角を言い当てられる。これも一部の人に備わったシックスセンス(第六感)なのだろうか?

 地球の磁場に異変があると言われているが、磁場を感じ取ることができる人々は、その異変に気が付いているのだろうか?

・地球の磁場に異変。その原因は不明。 : カラパイア

References:People can sense Earth’s magnetic field, brain waves suggest | Science News/ written by hiroching / edited by parumo
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