鳴き声だけ聞こえてくるが姿は見えず。全米で大騒動を引き起こしたミステリー「囚われの猫」。その結末は?(アメリカ)
1957年のことである。ある家族が、アメリカ・カリフォルニア州グレンドーラの夢のマイホームに入居した。
ところが、この家で不可解なことが起こり、家族は大いに困惑した。
家のどこかで、助けを求めて鳴いているような猫の声が、四六時中聞こえてくるというのだ。この事件は、新聞各紙でも事細かに報道された。
猫が壁の中に閉じ込められていたら大変だ。
この事件は警察、消防、専門家のみならず全米を巻き込んでの大騒動となった。そしてついにその正体が判明する。
・家の中から聞こえてくる謎の猫の鳴き声
この不可解な現象が起きたのは、ヴィンセント・カルタ氏の新居である。謎めいた猫の鳴き声が家の中から聞こえてくるというのだ。
昼夜問わずニャーニャー鳴く声は18日間も続いていた。だがその姿は一向に見えない。

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・全米を巻き込んでの猫探し大作戦
もしかしたら壁かパイプの中に猫が閉じ込められているのかもしれない。
カルタ一家は、警官、消防士、獣医、友人たち、果ては赤の他人までも巻き込んで、幻の猫探しに躍起になった。
新築の真新しい浴室の壁は穴だらけ。猫の鳴き声がその辺から聞こえてくるというので、大工がバスタブの回りに穴をあけまくったのだ。
だが猫の姿はどこにも見当たらない。

「鳴き声が聞こえてくる場所が定まらないの。家じゅうから聞こえてくるのですもの。猫がパイプの中を歩き回っているのかもしれない。でも、日ごとに鳴き声が弱くなっていて、もう長くないかも」とユーニス夫人。
猫がどこかの通風孔から入り込んで、そのまま壁の中から出られなくなったか?あるいは、近くにある渇いた井戸や、地中に埋めてある浄化槽に落ち込んた可能性もあるという。
ーエルウッド"コール=リーダー"紙の報道(1957年1月26日付)ー
「もう限界だ」先月、妊娠3ヶ月の妻ユーニスと、11歳のヴィンセント・ジュニア、9歳のサンドラと共にこの家に引越してきたばかりのヴィンセント・カルタ氏は言う。
「あのニャーニャーいう鳴き声に頭がおかしくなりそうになっている」
この鳴き声問題で困っていたのはカルタ家の住人だけではない。この家は、エスクロー(第三者を仲介させて取引の安全を担保する第三者預託)としてまだ第三者に預託されていて、建築請負業者のH. C. エリオットは、猫ミステリーが解決するまでは、工事費を受け取れないのだ。
カルタ家のこの事件は、この頃には全国的に知られるようになっていた。
・ありとあらゆる手段を講じても猫が見つからない
全国の新聞各紙が哀れな猫の悲劇をこぞって報道し、救出のためにありとあらゆる手段がとられたが、どれもうまくいかなかった。

ーロサンゼルス・タイムス誌の報道(1月27日付)ー
昨日は、カルタ家の幻の猫が鳴き始めてから21日目だった。
ロス市警の科学捜査官でも、この謎めいた猫の所在を突き止めることができない。刑事のD・A・ウォルファーとM・J・リーは、X線装置やアンプを持ち込んだが、鳴き声の発信源がどこなのか、正確に突き止めることができなかった。
パサデナの獣医は「21日間もエサがなければ、相当太った猫でもない限り、それほど長くは生きられないだろう」とコメントした。
話はどんどん大きくなって、カルタ家以外にも、警官、消防士、獣医、動物愛護協会、配管工、大工、請負業者など、さまざまな人たちが猫の救出に乗り出し、全国から、それはさまざまな意見が寄せられた。
「バスタブの後ろを調べてみましたか? 配管とか、屋根裏、地下、垂木などはどうでしょう?」
ワシントンからわざわざ電話をかけてきたある女性は、自分の犬を貸し出すと提案した。「この犬は猫が嫌いなので、猫がどこにいるかすぐに見つけると思いますよ」
8ヶ月前に海軍を退いたヴィンセントは、これでやっと引越し続きの生活が終わりになると家族に話していた。
まずは、静かに穏やかに落ち着ける家を見つけるために、フロリダ、ニューイングランド、ミッドウェストなどを8000マイルも走り回って、やっと、ここグレンドーラに理想の家を見つけた。
ヴィンセントはロス市の水道電力局に仕事を見つけ、去年の8月、この家の頭金を払った。
「通勤には車で25マイル(40キロ)も走らなくてはならないが、構わなかった。家は山の麓にあり、近隣の環境もよく、本当に気に入ったんだ。この猫騒動が起こるまでは」
カルタ家はこの家を出るつもりはなかったが、あと数日で、寄託が終了することになっているのに、猫騒動のせいで被った家屋の損害はかなりのものになっていた。
ミセス・カルタは、このストレスが収まらないと、流産するかもしれないとまで医師に言われた。
ーニューヨーク・デイリー・ニュース誌の報道(1月28日付)-
警察のX線技術者が壁を調べてみたが、猫と思われる姿をとらえることはできなかった。だが、鳴き声やゴロゴロいう音だけは相変わらず聞こえていた。
カルタ家は全員で教会へ行って、この苦境を打開できるよう、神に祈った。
・”囚われ猫物語”がついに終止符。鳴き声の正体が判明!
全米を巻き込んで大捜索が行われていた「囚われ猫」
だが、ついにその正体が判明する。
ニャーニャーという鳴き声に聞こえたその音は、水道メーターが発していた音だったのだ。
-オシュコシュ・ノースウェスタン紙の報道(1月28日付)-
バーナビー建設という建築会社が、家をすべて壊して調べた後、再び新しい家を建てるのをタダでやってくれると申し出た。まさに救世主だ。
しかし、この"囚われ猫物語"は思いもよらぬ形で終止符が打たれることになった。ヴィンセント・カルタ家の幻の猫の正体は、音をたてる水道メーターだった!
突きとめたのは、音響技術者のロジャー・アダムズ。
高感度の音響探知機を使い、壁を注意深く調べて音をたどってみると、猫の鳴き声に聞こえたその音は、水道メーターが発している音であることがわかった。どういうわけか、本物の猫そっくりの音をたてていたのだ。
この水道メーターは新しいものに取り替えられ、22日目にして、カルタ家を悩ませ、全米を巻き込んで大騒動にまでなったニャーニャー事件は解決した。
"哀れな猫"がカルタ家の新居の壁の中で餓死してしまう前に、アダムズは土壇場でこの騒動に参戦した。
「猫などいないのは確実ですよ。犯人は水道メーターでした。間違いありません。エサなしでずっと生きられる猫はいませんからね」
とりあえずよかった。壁に閉じ込められて死にそうな猫はいなかったのだ。
だが誰もが猫の鳴き声だと信じ込んでしまうほどに、その水道メーターの音は猫の鳴き声そっくりだったのだろうか?
当時の音声記録がないのでわからないが、とにかく大騒動だったことは確かだ。

「やっと普通の生活に戻れそうだ」ヴィンセントはそう笑ったそうだが、この事件は思い出深いものとなっただろう。
References:Strange Company: The Mystery of the Meowing House/ written by konohazuku / edited by parumo
