世界初、男性でも女性でもない中性の声。ジェンダレスなマシンボイス「Q」が誕生。これがその音声だ(デンマーク)

photo by istock
声だけで操作するAIデバイスは、最近ではかなり一般的になってきた。そこで使用されているのがマシンボイス(機械音声)である。
「Hey Siri(ヘイ シリ)」でおなじみのiPhoneなどアップル製品に搭載されている音声アシスタント機能「Siri」は男性の声と女性の声が選べる仕様になっているが、男性か女性、どちらかの声に設定されているものも多い。
例えば、銀行や保険など、お堅い分野では男性の声が使われる傾向にあり、受付やカスタマーサービスなどは女性の声が使用される傾向にあるという。
現在開発が進められている男性でも女性でもない中性ボイスの「Q」は、そうしたデバイスの声の選択肢の1つとして提案されている。
その目的は技術におけるバイアスを根絶することだ。
まずは開発中のマシンボイス「Q」の音声を聴いてもらおう。
Meet Q: The First Genderless Voice - FULL SPEECH
男性の声と思って聴けば男性の声に聞こえるし、女性の声と思って聴けば女性の声に聞こえる。先入観を払拭して聞けば、男女どちらの声にも聞こえるから不思議だ。
・5種の人間の声を録音して音声ソフトウェアで調整
クリエイティブグループ「バーチュー(Virtue)」は、デンマーク最大の人権フェスである「コペンハーゲン・プライド(Copenhagen Pride)」と提携し、世界初となる中性ボイスの開発を進めている。
中性ボイスを開発するにあたっては、コペンハーゲン大学の言語学者アンナ・ヨルゲンセンの協力をあおいでいる。
まず最初に、すぐには男性とも女性ともはっきりしないような5種類の声を録音。これらをヨルゲンセン氏が自身の研究で利用している特殊な音声ソフトウェアで調整し、中性化がはかられた。
調整された音声を、今度はヨーロッパ諸国で計4600人の人に聞いてもらい、それが男性のものか女性のものか評価してもらった。
その評価に基づいて、一番中性的に聞こえる声を選び出した。
こうして選ばれた声をさらに中性に聞こえるように調整し、仕上げたものがQの声だ。

image credit:youtube
・Qは未来の声。さまざまな場所での導入を目指す
バーチューのライアン・シャーマン氏とエミル・アスムッセン氏は、Qはたった1人の声ではなく、誰にでも開かれた未来のために戦う大勢の人たちの声だと話す。
「技術は時代遅れのものではなく、新しい文化的真実に根ざしているべきです。」(ライアン・シャーマン氏、エミル・アスムッセン氏)
現時点では、Qには実際に音声プラットフォームに採用された実績はない。しかしバーチューとコペンハーゲン・プライドは、今後さまざまな機会でQが利用されるようプロジェクトを進めている。
音声補助デバイスだけでなく、駅や劇場の案内、あるいはゲームなどでも利用してもらいたいとのことだ。
References:genderlessvoice / dezeen/ written by hiroching / edited by parumo