脳に電気ショックを与えることで高齢者の記憶力を20代まで回復させたという実験結果が報告される(米研究) (2/3ページ)
じつは作業記憶低下の裏には、リズムがうまく噛み合わなくなるという、もう一つの要因がある。
これらのリズムは、脳が情報と記憶を別の場所に伝達する手助けをするものだ。
脳科学者によると、作業記憶が効率的に機能するためには、前頭前野と側頭部の間で、「シータ波」というゆっくりとした低周波リズムと「ガンマ波」という速い高周波とがきちんとシンクロする必要がある。
このシンクロを「位相振幅カップリング」というが、これが年齢とともに低下してしまうのである。その結果、作業記憶も低下する。
ところが、「経頭蓋交流電流刺激」という電気刺激を用いることで、シンクロ率をアップさせられるらしいのだ。
・非侵襲的な電気刺激で作業記憶が向上したことを確認
ラインハルト氏の研究では、非侵襲的(体を傷つけない)電気刺激を与える前後で、高齢者(60~76歳)42名、若者(20~29歳)42名に画像の間違い探しを行なってもらい、その間の脳の活動を測定した。
通常なら若者のシンクロ率は高齢者よりも高い。そのため認知テストの成績も優れている。
しかし、たった25分間、高齢者に経頭蓋交流電流刺激をほどこすと、脳波のシンクロのズレが雲散霧消してしまったのだ。
その効果は、高齢者と若者の認知テストの結果を比べても、統計的な差異が認められないほどである。そして、この効果は50分ほど持続した。
左から20歳の人(刺激なし)、高齢者(刺激なし)、高齢者(刺激あり)の作業記憶を表したものimage credit:Reinhart Lab/Boston University
・記憶力の弱い若者にも効果的
ちなみに作業記憶の改善効果は、高齢者だけでなく、若者にも発揮されるようだ。