ノリ、なあなあ、捨てぜりふ…歌舞伎から生まれた言葉たちを一挙36個紹介!

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ノリ、なあなあ、捨てぜりふ…歌舞伎から生まれた言葉たちを一挙36個紹介!

普段何気なく使っている言葉の多くに、歌舞伎由来のものがたくさんあることを御存知ですか?刀や相撲などからも、慣用句として定着した言葉が少なくありませんね。

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今回は歌舞伎由来の言葉を、上段には現代で使われている一般的な意味を、下段に歌舞伎で使われていたその由来を載せ、あいうえお順に紹介したいと思います。

こんな物まで?という言葉がたくさんありますよ!

愛想づかし=相手が嫌になってつれない態度をとること
(歌舞伎)相思相愛の男女が縁切りする場のことから

板につく=態度や物腰などが、その職業や地位などにふさわしくなること
(歌舞伎)俳優の芸が舞台に調和すること

一枚看板=団体や組織を代表する人物
(歌舞伎)江戸時代、劇場の表に掲げられた大きな看板で、主演俳優の舞台姿が描かれていたことから

裏方=表立たないで、実質的な仕事をする人。または芝居で役者以外の職務をこなす人
(歌舞伎)演出の進化に伴い職業が分業化され、見物席や事務所で働く表方と、楽屋で働く者を裏方と呼ぶようになった。裏方には狂言作家(劇作家)も含まれる

お家芸=得意とする特技
(歌舞伎)家に代々伝わる得意芸のこと

大詰め=物事の最終段階
(歌舞伎)長い作品の最終幕。寛政の頃は、通しで演技すると一日に及ぶこともあり、一番目と二番目に分けて上演した。その際、一番目の最後の幕を「大詰」、二番目の最後の幕は「大切」と呼んだ

大向こうを唸らせる=大勢から称賛を浴びること
(歌舞伎)大向こうの観客を感嘆させること。「大向こう」とは天上桟敷のことで、値段が安価なので芝居好きが通う場所。そのいわゆる「通」の者たちが役者に合いの手やかけ声をかけたことから、次第にその者たちを「大向こう」と呼ぶようになった。その通人たちを感嘆させる芸を見せることから、この言葉が生まれた

御曹司=身分や地位の高い人の子どものこと
(歌舞伎)座頭を担うほどの役者の子ども。名優の子息のこと

歌川廣重画『東都名所 芝居町繁榮之圖』

口説き=納得させようとしきりに説得したり懇願したりすること
(歌舞伎)くどくどと長く心中を吐露すること。心情を述べて嘆き悲しむ芝居の一つの型をいう

黒幕=自分は表に出ず、他人を操り影響力を行使する人
(歌舞伎)夜の場面を表す背景幕や、死んだ設定の人物を隠しながら袖に引っ込むときに使う黒い幕。総じて、舞台の不必要な部分を隠す幕のこと

こけら落とし=新たに建てられた劇場で初めて行われる催しのこと
(歌舞伎)「こけら」は材木を削った時に出るクズのこと。劇場の新築・改築の最後に屋根のこけらを払い落とすところから転じて、最初の興行のことを表す言葉として用いられるように

差金=陰にいて人をそそのかし操ること
(歌舞伎)黒く塗った棹の先に針金をつけ、蝶・小鳥・小動物などの人形やはりぼてを操る小道具

鞘当て=女性をめぐり複数の男性が争うこと
(歌舞伎)武家同士がすれ違った際に刀の鞘がぶつかりもめること。またそれを形式として、一人の女性を二人の男が奪い合うこと

三枚目=道化役。滑稽なことをする人
(歌舞伎)芝居小屋の看板の三枚目が常に道化役だったことから

愁嘆場=悲劇的な場面
(歌舞伎)善良な市民が身の上の不幸を嘆き悲しみ、訴える場面

十八番=得意芸のこと。現代では「おはこ」とも称するが、本来は「じゅうはちばん」
(歌舞伎)七代目市川團十郎が得意としてきた芝居18作品を選び、【歌舞伎十八番】と名付けたことから

「市川家歌舞伎十八番組」(台本が入っていた箱)国立国会図書館から

修羅場=正確には仏教用語で、阿修羅が帝釈天と争う場所のこと。転じて闘争、戦乱の激しい場所のことを指す
(歌舞伎)激しい戦いの場面

正念場=最も大事なところ。ここぞという場面
(歌舞伎)その役の本心を明らかにする大切な場面を「性根場」と呼んでいたことから転じた

千両役者=「才能や力量が他から抜きんでている人」のこと
(歌舞伎)1年間で千両(約1億円)稼ぐ役者。最初の千両役者は二代目市川團十郎とされている

捨て台詞=別れ際に言う、相手を脅す言葉
(歌舞伎)台本に書いていない台詞を臨機応変にいうこと

世話女房=こまめに夫の面倒をみて、家庭内をうまく切りまわす妻
(歌舞伎)世話場に登場する町人や農家の女房

だんまり=押し黙ってしゃべらないこと。「だんまりを決め込む」という常套句に
(歌舞伎)暗闇という設定の舞台上で、数人の役者が一言もしゃべらず、探り合いをしながら動く演出

とちる=台詞を言い間違えたり、演技を間違えたりすること
(歌舞伎)台詞を忘れたり、間違えること
江戸時代では座席を前から「いろはにほへと・・・」で割り振っていた。「とちり」の座席は、前から7~9列目に当たり、舞台を見渡せて花道も見え、役者の失敗がよくみえるから「とちり」と呼ぶようになった説がある。
また、とちり席は良席とされていたため、俗に「歌舞伎はとちりがいい」と言われた

愛媛県の芝居小屋の内子座

どさ回り=決まった劇場をもたず、地方巡業をすること。また、その劇団
(歌舞伎)隠語で旅興行のこと

泥仕合=いに、相手の欠点や秘密を言い合って非難し合うこと
(歌舞伎)舞台に泥田を作り、その中で争い合う演技を仕合うこと

どんでん返し=正反対にひっくり返すこと。話・形勢・立場などが逆転すること。
(歌舞伎)舞台装置全体を前後に半回転させて場面を転換する仕掛け

なあなあ=相手と適当に折り合いを付けて、物事を済ませること
(歌舞伎)内緒話の場面で、一方が「なあ」と言うと相手が「なあ」と返す演技

二枚目=優男。美男子
(歌舞伎)芝居小屋の看板の二枚目に、若手の柔らかい演技をする俳優を掲げたことから。何かに付け失敗しがちだけれど、女性から何故か好かれてしまう役が多い

のべつ幕なし=物事が絶え間なく続くこと
(歌舞伎)芝居で幕を下ろさずに演じ続けることから。ぶっつづけで演じること

ノリ=音楽に合わせてリズムを表すこと
(歌舞伎)お囃子に乗って演技すること

花形=人気者、スター
(歌舞伎)本来は「花方」と呼び、明るく華やかな芸風を持つ役者のこと

花道=客席後方から舞台に繋がる道。主に役者の登場や退場に使われる。
(歌舞伎)元々は客が役者に祝儀を渡すための道で、祝儀のことを歌舞伎界では「花」と呼んでいたことから。

幕を引く=物事の終わり、終わらせること
(歌舞伎)幕を引くことで芝居の終結を表していたことから

見せ場=見る価値のある場面
(歌舞伎)芝居の中で、最も重要な場面や盛り上がる場面

見得=「見得を切る」が常套句。おおげさな言葉や態度で、他人に自信のほどを示すこと
(歌舞伎)歌舞伎独特の演技で、途中で大きく体を動かしたあと、固定のポーズを取ること。初代市川團十郎が考案したとされる

めりはり=物事に起伏があること
(歌舞伎)声をゆるめたり張ったりすること。台詞の抑揚をつけること

「めりはり」「ノリ」などは現代語かと思っていた方も多いのでは?意味がほぼ同じ言葉もあれば、現代語の意味とはかけ離れた由来の言葉も多いですね。

ちなみに出勤の挨拶として「おはようございます」と呼び合う習慣も、歌舞伎からきていると言われています。

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