ワームホールによるワープは可能。でも思っているより時間がかかり近道にはならない(ハーバード大学物理学者)

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ワームホールによるワープは可能。でも思っているより時間がかかり近道にはならない(ハーバード大学物理学者)
ワームホールによるワープは可能。でも思っているより時間がかかり近道にはならない(ハーバード大学物理学者)

Pitris/iStock

 湾曲した時空のトンネルで、中に入ればはるか遠方まであっという間にワープできるとされるワームホール――それが存在しうるということが、ハーバード大学の物理学者によって明らかにされた。

 だが、銀河の果てまで旅をしようと旅行鞄に荷物を詰め込むのはちょっと待ってほしい。ダニエル・ジャフェリス氏によれば、理論上は存在しうるとしても、人間が移動に使うには便利なものではないらしい。

 直接行くよりも、ワームホールのほうが時間がかかるというのだ。

・ワームホールは近道にならない?

 この新説は2019年度アメリカ物理学会で発表される予定のものだ。

 新理論の重要な点は、ブラックホール情報パラドックスや、重力と量子力学との関係といったことを知る手がかりになるという。

 光が通過できるワームホール作成法を発見することができれば、量子重力理論の発展を加速させる便利なツールになるだろう。

 2013年に提唱されたER = EPR理論では、ブラックホールを結ぶ「アインシュタイン=ローゼン・ブリッジ」(ER)が存在し、これは素粒子の「量子もつれ」(EPR)と等しいと主張している。

 そして、ジャフェリス氏によれば、ブラックホール同士を接続させた方が、ワームホールより短いということである――

 つまりワームホールは近道にならないのだ。

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photo by pixabay

・銀河旅行には役立たないが、量子重力理論を進めるツールになるかも

 銀河旅行の役には立たないかもしれないワームホールだが、量子重力の理論の発展を加速させるツールとして利用できるという。

 これは、普通なら事象の地平面の後ろに隠れてしまう領域を探る計器になるという。時空の内側にいる観察者の経験を知る窓であり、しかもそれを外側から覗きこむことができるのだ。

 深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいていれれば、それを知る手がかりとなる。

 現時点で、通過可能なワームホールを定式化するための最大の難関は、負のエネルギーだ。

 これは量子重力とは一貫していないかのような印象があるのだが、新しい場の量子論に基づくツールを利用することで、この難題を突破しようというのがジャフェリス氏の狙いである。

 「ゲージ・重力対応や量子重力などについて詳しいことがわかるでしょう。量子理論を定式化する新しい方法すら見つかるかも知れません。」(ジャフェリス氏)

References:Travel through wormholes is possible, but slow/ written by hiroching / edited by parumo
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