10年間共に過ごした飼い主が亡くなってしまった。悲しみに暮れ、一度生きることを放棄した犬の物語(アメリカ)

カラパイア

10年間共に過ごした飼い主が亡くなってしまった。悲しみに暮れ、一度生きることを放棄した犬の物語(アメリカ)
10年間共に過ごした飼い主が亡くなってしまった。悲しみに暮れ、一度生きることを放棄した犬の物語(アメリカ)

Chalabala/iStock

 犬や猫、その他ペットを飼っている人ならば、そのペットが虹の橋へ向かうその日までお世話をしたい。少なくとも、自分を看取ってもらうつもりでペットを飼い始める人というのはそうそういないだろう。

 だが、人生には不測の事態というのがつきものだ。急な病気や交通事故など、ペットより先に飼い主の方が虹の橋へ向かう羽目になってしまう事例だって、世の中にはある。

 ゴールデンレトリバーのミックス犬であるリオも、そうした何かの事情で飼い主を亡くしてしまった。そして、すぐに犬を引き取れる人もいなかったことから、デトロイトの公営シェルターに連れて来られたのだ。

 しかし、10年間を共に暮らした飼い主を亡くしたリオの悲しみは、非常に深かった。エサも食べず生きることを放棄してしまうぐらいに。

 この物語は、「デトロイトで一番悲しんでいる犬」と言われたリオが、再び生きる希望をみつけだすまでを記録したものである。
・生きることを放棄した犬

 シェルターに連れて来られたリオは、明らかに心を閉ざしていった。

 最愛の飼い主を失った悲しみに加え、見知らぬ場所での生活や、共に暮らすたくさんの犬たちといったストレスが重なっていたのだから、無理もない。リオはエサを食べようとせず、スタッフの働きかけにも反応せず、目を見ようともしなかった。



 その様子に気づいたスタッフは、リオを犬舎から出し、スタッフの働くオフィスで過ごさせた。しかし、リオはじっと壁の方を向いたきりで、誰かが撫でようとすると身を震わせるのだ。

 悲しみにくれるリオの様子は、「デトロイトで一番悲しんでいる犬」としてニュースにもなった。

 この世に望むことなど、リオにはもう何もなかったのだ。



・心のケアをしてくれる専門のシェルターへ移送

 このままではリオは遠からず飼い主の後を追ってしまう。スタッフはそう考え、「デトロイト・ドッグ・レスキュー」(DDR)に助けを求めた。DDRでは、特に心身に問題を抱えた犬を積極的に受け入れ、専門的なケアをしているのだ。

 リオはDDRに受け入れられた。この時点で、リオは深い喪失感からうつ状態になっていると考えられた。「リオはこれまで知っていた全てのものから引き離されて、とてもつらい時を過ごしていました」とDDRの代表のクリスチナ・ミラン=リナルディ氏は言う。

 「犬という生き物が、どんなに直観力に優れ、繊細であるかということに気がつかない人は多くいます。犬は身の回りで起こっていることを全て感じています、人間と同じように」

 程なくして、DDRはリオの治療に適切な場所を見つけ出した。DDRで犬の一時預かりボランティアをしている、ライアンとターシャのキャラハン夫妻の家である。



・キャラハン家で少しずつ回復の兆しを見せたリオ

 キャラハン家には既に、飼い犬二匹と、同じくDDRから預かっている犬一匹がいた。だが、夫妻は快くリオを受け入れた。

 「適切な犬を、適切な時に、適切な場所に、ただそれだけのことですよ」とキャラハン夫妻。「リオは私たちを必要としていましたし、私たちはリオに必要な一対一で過ごす時間をつくることができましたからね」

 キャラハン家では、リオに特別な居場所を用意して待っていた。在宅で働くライアンさんの仕事部屋だ。

 ライアンさんの足元で過ごすリオは、一日ごとに緊張を解いていった。やがてライアンさんの膝に乗り、その目を覗き込むようになった。人間との関係を新しく構築し始めたのだ。



・自分はこの世にいていいんだ。希望を持ち始めたリオ

 さらにリオは、人が通りかかると尻尾を振るようになり、一緒に森での散歩を楽しむようになった。

 リオの目覚しい回復についての、ライアンさんの理論は単純だ。「誰かの人生の中に居場所が必要だっただけだと思いますね」



・自分を必要としてくれる人がいる。自信をもって新しい家族のもとへ

 それから半年ちょっと。すっかり回復し、心身の健康を取り戻したリオの新しい家族の募集が、DDRで始まった。

 さらに約2ヶ月の後、リオは新しい家族に引き取られていった。悲しみに満ちたリオの物語を目にして、「それなら是非私たちが引き取ろう」と決心したカップルである。関係者もみな、リオが新しい家族にスムーズになじむよう、最大の努力をした。

 また引越しをすることになったリオだが、今回は自信に満ちており、悲しみのかけらも見られない。

 自分を愛してくれる人間はいつでもいる、ということを学んだのだ。



 レトリバーの血を引き、10歳を越えているリオが虹の橋へ向かい、元の飼い主と出会うのも、そう遠い先のことではないかもしれない。

 けれど、おそらくリオはすぐには橋を渡らないのではなかろうか。一匹と一人は、きっとその場で、新しい家族の皆や、キャラハン夫妻を待っていることだろう。

References: The Epoch Times / M Live / Facebook など / written by K.Y.K. / edited by parumo
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