人間の遺体を堆肥にし、自然に還す「有機還元葬」がアメリカ・ワシントン州で合法化される見込み

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人間の遺体を堆肥にし、自然に還す「有機還元葬」がアメリカ・ワシントン州で合法化される見込み
人間の遺体を堆肥にし、自然に還す「有機還元葬」がアメリカ・ワシントン州で合法化される見込み

Image by Katja Just from Pixabay

 先日、アメリカ・ワシントン州の上院と下院で法案5001号「人間の遺体について」が可決された。

 これは従来の土葬や火葬とはまた別の手段である。

 微生物の力を借りて遺体を分解してもらい、堆肥を作り、それを自然(土)に還すという「有機還元葬」だ。

 インスレー州知事が署名をしさえすれば、2020年5月から施行されることになる。そして実行されれば、ワシントン州は、人間の堆肥化を可能にした最初の州となるだろう。
・都会でも可能な地球に優しい死体処理

 人間のを堆肥にし、土に返すプロジェクトの提案者であり、そのために立ち上げた企業「リコンポーズ(Recompose)」社のCEOであるカトリーナ・スペードさんにとって、法案の可決は長年の願いが叶った瞬間であり、同時に彼女のビジョンを実現させる次の一歩の始まりである。

 ――そのビジョンとは、都会暮らしでもできる土を基本とした地球に優しい死体処理である。

 ワシントン州では人が死んだ後、選択肢は2つだ。火葬か土葬である。だがスペードさんは、どちらも良いものとは思えなかった。

 彼女は、このアイデアを閃いてからというもの、専門家の協力を仰ぎながら、微生物によって土の中の人の遺体が分解されるプロセスについて研究を続けてきた。
 
 そこから明らかになったのは、結果として残される堆肥は、有害な病原菌や金属という点において州や国が定める安全基準を満たしているということだった(しかも土以外の臭いもしない)。

 つまり、きちんと作ったヒト由来の堆肥は、家庭の菜園にもちゃんと安全に使えるということだ。とても安全な遺体のリサイクル法なのだ。


Human composting bill passes senate

・コスト面でも効率的

 米環境保護庁が有機還元葬の金銭的・環境的コストを調査したところ、非常に効率的かつ、環境的にも健全な埋葬法であることが判明している。

 たとえば、有機還元葬なら火葬に使われるエネルギーの8分の1で済み、その分二酸化炭素の排出を抑えることができる。

 環境に悪く、しかも高価なニス塗りの棺桶を用意する必要もない。

 米国では一般的な土葬の費用はおよそ88万~275万円とされる。火葬でも66万円するが、有機還元葬ならば60万円程度とかなり安く死者を弔うことができる。

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Image by Rudy and Peter Skitterians from Pixabay

・微生物が遺体を速やかに土に還す

 スペードさんによれば、有機還元葬は専用の施設で行われる。そこで遺体はワラやウッドチップといった自然素材に覆われ、3~7週間かけて微生物の活動によって分解される。

 もちろんこの間、遺族はそこを訪問してもいいし、残った土を持ち帰って、好きなように使うこともできる。もし遺族が要らないというならば、地域のグループに託し、堆肥として利用される。

 有機還元葬の支持者のウェス・マクマハンさんはこうコメントする。

 「遺体の堆肥化に大賛成! 64年間頑張ってくれたこの体がダメになったら、ホルムアルデヒドやらなにやら防腐剤たっぷりの中に横たわらなきゃならない? 冗談じゃない。燃やしてしまう? それもゴメンだ。でもずっと共生してきた微生物なら、自然に処理させてあげてもいいね。可能な限り一番自然な方法だと思うよ。」

 現州知事はクリーンエネルギー政策の推進に熱心なことで知られている。こうしたことからも、法案が署名される見込みは高いと見られている。

References:kiro7/ written by hiroching / edited by parumo
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