コスメカウンターという憧れに終止符を (2/3ページ)
わからなくて何もやっていないから私を比べたり攻撃したりしないでという腹見せで、戦争と努力の放棄と引き換えに自分を守っている。
そうやって一生懸命に目を背けているのに、百貨店のコスメコーナーは私の決死の防衛すらいとも簡単にスパークさせ、自意識と羞恥が爆発を起こす。他人から見れば何をそんなにと思うことかもしれない。けれど、私にとっては生活に支障を来たすほどの一大事だ。然して私は百貨店のコスメコーナーを目の敵にし、疎んで避けてきた。
そんなこんなで、私はかわいいガールからの誘いを二つ返事で受けられなかった。だけど、彼女となら行ってみてもいい気がした。その後、「百貨店は怖い」だの「だけどあなたとなら行ってみたい」だの弱音を延々まき散らした挙句、その2週間後、私はかわいいガールと百貨店のコスメコーナーにいた。
■憧れ戦争、迎え撃ってピリオド
おはようと手を挙げた私はできる限りの完全防備。いつもより粉を多めにはたいて、目尻のラインを強めに引いて。戦意OK、武装OK、カードOK、特攻可能。私は人でも殺しに行くような気持ちで肩をいからせて白くて明るい百貨店の中をかわいいガールと恐る恐る進んでいく。
緊張する。だけれど、今日は大丈夫。粉多め、目尻のライン強め、おまけに隣にかわいいガール。今日だけは強気。「お試しになりますか」の声かけに二つ返事で頷く。
椅子に腰かけて顔を見合わせる。彼女は少し緊張しているのかなと思う表情だったけれど、鏡に映った私の顔は同じかもっとそんな顔をしていた。グロスを施される彼女に見惚れる。マッチの火でも灯したように顔全体が華やぎ、白い肌が陶器のようにつるりと際立つ。かわいいガールはもともとかわいいが、なんだかちょっと別人みたいだ。
私はうわごとみたいに、めちゃくちゃかわいいと繰り返し呟く。唇を使えない彼女は目をほんの少し細める。私はめちゃくちゃかわいいと繰り返し呟く。
今度は私の番。美容部員さんの顔が近づいて何か顔にアラがあったらどうしようと変な汗をかく。あまりに緊張して、彼女に視線を送ると「大丈夫」という感じで視線を送り返してくれたような気がした。だんだんと肩の力が抜けて汗がひいてくる。私たちは同志。