お金(インセンティブ)で人から創造性を引き出せるか?(アメリカ・イタリア共同研究)

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芸術であれ、科学であれ、創造的な人物は高く評価される。
もちろん企業だって、革新的な製品を生み出すために、どうにかして従業員から創造性を引き出したいと願っている。
だが、創造性とは、自由や自発性、心の底からの情熱といったものに根ざしているはずだ。
はたして職場でなんらかのインセンティブ(報奨金)を与えて、それを鼓舞することなど可能なのだろうか? また仮に可能なのだとしても、それはお金なのだろうか?
・お金は創造的? 非創造的?
この疑問に答えようとしたのが、経済学者のゲイリー・チャーネス(アメリカ・カリフォルニア大学サンタバーバラ校)とダニエラ・グリエコ(イタリア・ボッコーニ大学)だ。
彼らは、かつてお金は「イノベーションにいたる」と述べたことがある。
たとえば、1860年代、ナポレオン3世は、軍や貧困層向けの安価なバターの代用品を考案した者に賞金を与えるというコンテストを開催したことがある。その結果、発明されたのがマーガリンだ。
しかし彼らは一方で、創造性を引き出すためにお金を支払ってしまっては、心から湧き上がる衝動を締め出してしまうために、非生産的であるとも述べている。
これらを踏まえた上で、新たに『European Economic Association』に掲載された研究では驚きの発見がなされた――確かに、お金を払うことで人を創造的にできるようだ。

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・金一封(報奨金)で創造性を引き出せるかの実験
実験では、328名を対象に、「閉鎖的な」創造的課題か「開放的な」創造的課題のいずれかを行ってもらった。
閉鎖的課題とは、パラメーターがはっきりしているものだ。この研究では、特定の単語を用いてストーリーを作成するか、自分で考案した計算法によって特定の数字を導き出してもらった。
開放的課題とは、それとは対照的にパラメーターに制限がないものである。参加者は、未来の社会について記述するか、架空の発明を考案するよう求められた。
課題を行うにあたって、参加者はいくつかのグループにわけられた。
1つは、ほかの参加者の成果の創造性を採点するグループ。2つめは、あらかじめ自分の成果が採点されることを知らされるグループ。3つめは、金銭的なインセンティブ(創造性スコアが高かった人に1000円相当を与えるなど)が与えられるグループだ。
なお、いずれのグループでも参加費用として550円相当が支払われた。

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・お金は創造性を高める。だが、それより効果的なのは――
実験の結果、閉鎖的課題についてはお金が効くことが判明した。高スコアならお金が与えられるグループの成果は、ほかのグループよりも創造性が高いと評価されたのだ。
しかし開放的課題については、金銭的インセンティブで創造性のスコアが高まることはなかった。
ここからわかるのは、”自由”な創造性が求められる場合には、お金を支払ってもあまり意味がないが、創造的な思考が必要だったとしても、ある程度条件が決まっているような場合はそれなりに効果があるということだ。
だが、もしかしたら、もう1つの結論のほうが示唆に富んでいるかもしれない。
すなわち、評価されると事前に知らされていたグループでは、閉鎖的課題も開放的課題も創造性のスコアが伸びたのだ。
もちろん私たちはお金を気にするが、それと同じくらい、他人からどう思われるのか?を気にするということだ。
References:Can you pay people to be more creative? — Quartz at Work/ written by hiroching / edited by parumo