『チェンソーマン』の新しさ! 夢なき若者が“胸を揉むため戦う”少年漫画の最前線 (2/2ページ)

日刊大衆

 状況に流されてただ欲望のまま戦うデンジは、その時々には真剣であるとはいえ、一見すると芯のない軟派なキャラクターのように見える。しかしはたして本当にデンジは夢のないブレた人物なのだろうか?

 胸を揉むことが人生の最大の目標であるならば、揉んでしまうだろう。しかし結局のところデンジは、強引に目標を達成したりはしない。このことは、デンジの中で「胸」よりも大きな倫理観があるということの表れなのだ。

 つまり本人の自覚していないところで、何か大事な信念を抱いている。たとえばそれは「人を傷つけたくない」ということかもしれない。当たり前のことだが、当たり前のことだからこそ大切なものだ。

 そういう意味では、少年漫画の主人公にふさわしいキャラクターだといえよう。

 生きる目的や夢がなんだか分からない、というのは現代の若者からよく聞く声の一つだ。「ただフツーに幸せに生きたいだけなのに、なんでうまくいかないんだよ!」という怒りが作品からも伝わってくる。

 そうやって読者に共感を誘いつつ、同時に主人公の強い信念も描くという、異色のバトル漫画である。

 大胆な筆致によるアクションシーンの痛快さも魅力の一つだ。

 5月2日に2巻が発売されたばかりの『チェンソーマン』。チェックしてみては? 

※画像は藤本タツキ『チェンソーマン』第1巻より

(文/漫画コラムニスト・トリカワマルケス)

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