アメリカの処方箋医薬品は日本・イギリス・カナダに比べて約4倍高い(米研究)

世界一の大国と言われるアメリカであるが、医療費の高さも世界有数であることで知られている。
なにしろ、破産の理由として一番多いのが、医療費が支払えないことだったりするくらいなのだ。
そんなアメリカで処方されるブランド薬の価格も世界一高いという。
『Health Affairs』の5月号に掲載された研究によると、アメリカ国内のブランド薬の平均価格は、日本・イギリス・オンタリオ州(カナダ)に比べると3.2~4.1倍も高いのだそうだ。
・医療費だけではない、やたらと高額な処方箋の費用
アメリカ・ジョンズ・ホプキンズ大学のジェラルド・アンダーソン氏らが調べたのは、処方箋薬剤給付保険の対象となっている特許で保護されたブランド医薬品――つまりジェネリック医薬品のない薬79種である。
抗凝固薬・糖尿病薬・抗ウイルス剤・免疫抑制剤など種類はさまざまだが、それらで2018年度の処方箋薬剤給付保険の半分以上を占めている。
対象となった薬の製薬会社からのリベート(販売促進用の払戻金)前後の薬の価格を調べたところ、日本・イギリス・カナダ(オンタリオ州)と比べたときのアメリカ国内のブランド薬の平均価格は、リベート前でそれぞれ3.4~4.3倍、リベート後で3.2~4.1倍高いことがわかった。
ちなみに比較対象となった国は、アメリカに類似する一人当たり所得と薬剤市場規模があり、独立した価格付けシステムのある国である。

raufmiski/iStock
・同じ医薬品であっても最大で70倍の価格差
平均価格に最大の差があったのは糖尿病の薬で、アメリカではイギリスよりも9倍高かった。ほかにも注射剤はイギリスの11.5倍、日本とオンタリオ州の8倍という価格差であった。
中には3割程度しか高くない薬もあったが、ものによっては70倍も高い薬すらあった。まったく同じ薬なのに、アメリカで買うとここまで価格が上がってしまうのである。
それを下げるための1つの方法として、他の国で処方される薬の価格を参考にするやり方が提案されている。
たとえば、アメリカ政府がイギリスからリベート前価格で薬を購入していたとすれば、2018年度の保険の支出は2018年度の7割以上削減できただろう。その削減効果はじつに8兆円にもおよぶ。
こうした外国の価格を自国の薬の価格に反映させるやり方は、ヨーロッパ各国をはじめ、オーストラリア、ニュージーランド、ブラジル、南アフリカでも実施されているアプローチであるそうだ。
References:External Reference Drug Pricing Could Save Medicare Tens of Billions / written by hiroching / edited by parumo