信じたくない。不倫相手の妻が妊娠したら (2/3ページ)
でも観月さんだけが会社に残って、堂々と出世しちゃってるのが、私はどうしても気に食わない」 「……不倫って、観月さんも認めてるの?」
藁にもすがる思いだった。
壮亮さんがその子との関係を否定しているならば、彼女とは本当に何もなかった、の、かも、しれない。そう思いたかった。思いたかったけど、さすがにそこまで馬鹿にはなれない。だって、弱ってるときにやさしい言葉をかけられて、って、わたしのときとまったく同じじゃないか。唯一無二のはずの恋物語は、キャストを替えた再上演だった。
「さぁ? お咎めなしなところを見ると、うまく言い訳したのかもね」
軽蔑の滲む小百合の横顔。
朝から混乱していた頭の中が、すごい勢いで整理されていく。簡単なことだった。壮亮さんは嘘つきで、部下に手を出すのに抵抗のないクソ野郎なのだ。それにしても、普通社内で何度も不倫するか? 小百合の後輩の件でもめたのに懲りなかったのか? それとも反省を活かした結果がわたしだったのか? わたしは精神のバランスを崩さなそうで、都合よく耐え忍びそうで、そういう恋に酔ってくれそうな女、だったのか?
「櫻子、大丈夫? 顔色が……」
壮亮さん、わたしはあなたが好きでした。男性として。でも、その前に上司としても尊敬してたんですよ。でも、でも、あなたは最初から、わたしのことは部下として、ううん、もしかして、ひとりの人間として見てくれてさえいなかったんですか。わたしは最初から、便利で都合のいい“女”ってだけだったんですか。
吐きそうだ。食べたものじゃなく、彼との言葉や思い出を体の外に出してしまいたかった。
「櫻子?」 「……ごめん、実は朝から体調が悪くて。今日はもう帰ろうかな」
限界だった。わたしは会社を早退することに決めた。
その断りを入れたときの、壮亮さんの上司顔は完璧だった。
「大丈夫? 気にせずゆっくり休んでください」
自宅について、鍵を閉めた瞬間に足腰に力が入らなくなった。同時に涙がドバドバ出てきてファンデやマスカラをめちゃくちゃにした。夜になると、上司ではなく彼氏の文面で、体調を案じるLINEが届いた。