大相撲の取り組みは自分の出番の前から始まっている!?土俵下にいる控え力士の役割とは?
控え力士って、なんのためにいるの?
大相撲を会場やTV中継で見ていると、ある光景が目に入ります。
自身の取り組みが近づいた力士が花道を通って入場し、土俵下の最も土俵から近い席(「砂かぶり席」と呼ばれています)に「控え力士」として座ります。
一見「力士が入場し、待機している様子」にしか見えないかもしれません。
しかし控え力士は、ただ座って自分の取り組みの順番が来るまで待っているわけではないのです。
控え力士の役割は「取組中の力士の介添えをすること」実は土俵下で自分の出番を待つ控え力士には、「取組中の力士の介添えをする」という大切な役割があります。
たとえば、土俵に上がった力士に水をつけたり、相撲が長くなって勝負がつかず「水入り」となった時などに、土俵上の力士にひしゃくで水を渡すのは控え力士の役割です。
取組中に土俵上の力士のまわしが緩んでしまったときなどにも、控え力士が土俵に上がって締め直すことがあります。
また控え力士は「足を投げ出さずに組んで座っているべき」とされています。
これには「足を投げ出すのはだらしない」という見た目上の問題もありますが、取組中の力士の巨体が土俵から落ちてくることがよくあるからという理由もあります。
そんな時に足を投げ出して座っている力士がいたら、危険極まりありません。
また砂かぶり席付近には一般のお客さんも座っているため、控えの力士が落ちてきた力士を受け止めなければ、一般のお客さんが怪我をしてしまう可能性が高まりますよね。
控え力士に定められた規則「寄附行為施行細則附属規定」で定められた「相撲規則 力士(競技者)規定」と「審判規則 控え力士」には、控え力士の規定が次のように定められています。
・第1条 控え力士は、自分の出場する二番前から所定の土俵溜まりに着かなければならない。
・第2条 控え力士は、土俵に上がった力士に水を与える礼儀を行う。
・第3条 水入りの際も、水を付け、褌を締め直す場合には助手となる礼儀を行う。
・第4条 競技が一時中止されるか、または終了の場合は、力士は必ず一人控え力士とならねばならない。
・第5条 控え力士は、勝負判定に異議ある場合は、物言いをつけることができる。
・第6条 控え力士は、勝負判定の協議に加わらず、したがって決定権を持たない。
ただし、花道から控え力士が入場してこなくなる「結びの一番」と「結び前の一番」の時には、少し複雑になります。
・結びの2つ前の一番で勝った力士Aは、「勝ち残り」として控えに残ります。
・結び前の一番の勝者BがAと同じ方屋(西方、または東方)だった場合は、Aは引き揚げてBが「勝ち残り」として控えに残ります。
(ここでBがAと反対の方屋だった場合、Aはまだ残ります。)
・結び前の一番で敗れた力士Cは、自分の方屋に控え力士がいなくなった場合は「負け残り」として控えに残りますが、水をつけることはできません。
また2014(平成26)年の夏場所12日目に、横綱・鶴竜と関脇(当時)・豪栄道の一番で、控え力士として座っていた横綱・白鵬が
「豪栄道が鶴竜の髷をつかんだ」
という物言いをつけ、勝敗がひっくり返り鶴竜の勝利となったことがありました。
「控え力士も物言いをつけることができるの!?」と驚いた方もいたようですが、これも規定によりできると定められていたのです。
しかし逆を言えば、物言いをつける権利があるということは、土俵上の相撲をしっかりと見ていなければならないということでもあります。
本場所中の力士は、まさに「会場を出るまでが取組」と言えるでしょう。
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