受け継がれる船霊信仰。海上自衛隊の護衛艦には「艦内神社」が祀られている

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受け継がれる船霊信仰。海上自衛隊の護衛艦には「艦内神社」が祀られている

日本には昔から「八百万(やおよろず)の神々」と言われるように、あらゆるもの、至るところに何かしらの神様がいらして、実に色々な場所でお祀りされています。

その場所は地上の定位置に留まらず、艦船に「神社」が祀られている例も多数存在します。

今回はそんな一社、海上自衛隊の護衛艦でお祀りされている「艦内神社」について紹介したいと思います。

受け継がれる船霊信仰

日本では古くから船には船霊(ふなだま。船玉、船魂などとも)という神様が宿っていると信じられ、海上安全や豊漁などを祈願してお祀りする習慣がありました。

やがて艦船の大型化に伴って内部に神社(多くは神棚が大きくなった程度)が設けられるパターンも生じ、艦船あるいは関係者に所縁の深い神社から勧請(かんじょう。神様の御魂をお頒ち頂くこと)してお祀りしています。

旧海軍の重巡洋艦・筑摩の雄姿。Wikipediaより。

例えば、旧海軍の巡洋艦・筑摩(ちくま)はそのネーミングが信州の筑摩川(千曲川の旧称)に由来しており、その艦内神社は長野県松本市の筑摩(つかま)神社より勧請された八幡神・宗像三女神を御祭神としていました。

海上自衛隊・護衛艦ちくまの艦内神社。

戦後、筑摩から艦名を受け継いだ海上自衛隊の護衛艦「ちくま」も、やはり所縁の深い筑摩神社から御魂を勧請しており、今でも乗組員たちの安全や任務完遂をご加護下さっています。

ちなみに、海上自衛隊の艦艇名は必ずしも山や河川と言った特定の土地に由来しないこともあり(気象や瑞獣など)、そういう場合はどうするのか海上幕僚監部に問い合わせたところ「所属する総監部によって適切な神社から勧請するため、転籍すれば勧請元の神社が変わることもあるが、御祭神には必ず就役から除籍までずっと同じ神様をお祀りしている」との事でした。

また、旧海軍に同じ名前の艦艇があれば、その前例に倣うこともあるそうです。

終わりに

古くより「板子(いたこ。船板のこと)一枚下は地獄」と言われるように、いつの時代も豊かな幸と共に、死の恐怖と隣り合わせているのが船であり、海というもの。

いつまでも、日本が海の幸と共にあらんことを。

常に命や生死を思えばこそ、自然≒神様に対する畏れや信心も深まるし、日々を大切に生きる意欲も湧いてきます。これからも海で生きる皆さんに、末永く神様の御加護があるよう願っています。

※参考文献:
小林孝裕『海軍よもやま話 イラスト・エッセイ』1980年
久野潤『帝国海軍と艦内神社 神々にまもられた日本の海』祥伝社、2014年

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