東海大学安楽死事件から考える安楽死と尊厳死 (2/3ページ)
■懲戒免職、殺人罪での起訴
翌日、病棟の医療スタッフの間で主治医の殺人行為に問われかねない投薬が問題視され、病院上層部に伝わった結果、懲罰委員会が開かれ、主治医は懲戒免職となり、警察にも通報された。そして横浜地検は1992年7月主治医を殺人罪で在宅起訴した。ちなみに「父を楽に」と訴えた長男は「殺人教唆罪」を問われることはなかった。
■裁判ではどのような判決が下されたのか
判決では安楽死の手段が消極的、間接的、積極的のいずれであっても、末期患者の治療中止の要件として、次の3点をあげている。
(1) 患者が不治の病を患い、回復の見込みもなく、死が避けられない状況を迎えていること
(2) 治療を中止する時点で、それを望む患者の意思表示があること
(3) 中止の対象は、疾病治療、対症療法、生命維持などすべての措置が含まれるが、どれをいつ中止するかの決定は自然死を迎えさせる目的のもとに中止されなければならないこと
また、同判決では積極的安楽死が許容される次の4つの要件が示された。
(1) 患者が耐えがたい肉体的苦痛に苦しんでいること
(2) 患者の死が避けられず死期が迫っていること
(3) 患者の肉体的苦痛を除去、緩和するために方法を尽くし他に代替手段がないこと
(4) 患者本人が安楽死を望む意思を明らかにしていること
主治医が起訴された行為は上記の(1)(3)(4)の要件を満たしていないため安楽死とは認められず、殺人の実行行為と断定された。検察は懲役3年を求刑していたが、1995年3月の判決では情状酌量もあり、懲役2年、執行猶予2年が言い渡された。弁護側も検察も控訴せず、刑が確定した。主治医は医師法の行政処分で3年間の業務停止となった。