天才テリー伊藤対談「小林清志」(1)翻訳仕事から偶然吹替の世界へ‥‥ (2/2ページ)
僕、宍戸錠さんと仲よくさせていただいているんですが、当時はどんな感じでしたか。
小林 授業の一環で演劇実習っていうのがあってね。最初にやったのが、彼との2人芝居ですよ。たしか飯沢匡さんの「還魂記」っていう戯曲だったかな。
テリー えっ、錠さんと?今から見ると、すごく豪華な共演ですね。
小林 まあ、当時はただの学生だから(笑)。彼が若くて貧しい青年役で、俺は老いた王様を演じてね、途中で2人の魂が入れ替わるという話です。
テリー 演劇科に入ったということは、やっぱりその頃から役者を目指されていたんですか。
小林 いやいや、そんなこと全然思っていなかったですよ。漠然と「シナリオを書きたい」とは思っていましたけどね。
テリー あ、裏方志望だったんですね。それがまた、どうして役者の道に?
小林 私を面倒みてくれた先輩が「劇団泉座」っていう劇団に行ったので、たまたまそれにくっついて入ることになったんです。行った日にいきなり「お前、アメリカ帝国主義が‥‥」なんて話してくるような、左翼バリバリのところでしたけれどね。
テリー 大卒で新劇に入るっていっても、生活は大変じゃなかったですか。
小林 そりゃもう、お金なんて全然ありません。たまたま実家が東京にあったので、なんとか食いつなぎましたけど。
テリー それで、声優の仕事はどういうきっかけで。
小林 子供の頃から英語が好きで、泉座で海外戯曲の翻訳なんかをやっていたんですよ。そしたら、海外作品の字幕吹替なんかをやっている東北新社からも翻訳の仕事を頼まれるようになったんです。
テリー へー、それはすごい!
小林 で、ある時「お前、役者なんだろう?」って誘われたことをきっかけに、翻訳と並行して吹替の仕事もやることになっちゃうわけですよ(笑)。