自然に起きる500倍という速さで植物の絶滅が進んでいることが世界最大規模の調査で判明(英研究)

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1900年以降、世界の種子植物は年にほぼ3種というペースで消えている。
これは自然に起きる絶滅の500倍という速さだ。
『Nature Ecology & Evolution』に掲載された調査では、33万種以上を調べ、島や熱帯が原産の植物は絶滅する可能性がかなり高いことが明らかになった。
また地域にかからわず、一番絶滅する可能性が高いのは、木や低木などの多年生植物なのだそうだ。
・1753年以降571種の植物が絶滅
この調査は、イギリス・キュー王立植物園の植物学者のラファエル・ガベアーツ氏が編纂したデータベースを元にしたものだ。
ガベアーツ氏はあらゆる既知の植物の状態を知るために、1988年から科学的な文献を元にして、すでに絶滅したと判断された種子植物と、絶滅されたとみなされたが後に発見されたもののリストを作成。
2015年、ここにスウェーデン、ストックホルム大学のエアリス・ハンフリーズ氏らが参加し、データを解析しつつ、各地域や植物の特徴(単年生か多年生など)ごとの絶滅率を比較した。
調査された学術文献には、分類学の父と言われるカール・リンネが『植物の種』を発表した1753年以来、ほぼ1234種が絶滅したと報告されていた。しかし、そのうち半数以上はそれ以降に再発見されたか、別の種に再分類されていた。
結果、現時点でも絶滅したと考えられているのは571種であった。

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・最も絶滅が進んでいるのは人口が急増している地域
絶滅した植物の分布図からは、マダガスカル、ブラジルの熱帯雨林、インド、南アフリカといった、生物多様性に富むが、人口が急激に増加している地域がもっとも絶滅リスクが高いことがわかる。

Humphreys et al./nature
絶滅した種が一番多かったのはハワイで、1900年以降79種が消えてしまった。ついで南アフリカで、こちらは37種が絶滅した。
ハンフリーズ氏によると、熱帯の絶滅率は、こうした地域の生物多様性の豊かさを考慮したとしても、予想を上回るものだという。また固有の種が存在する島は、そうした種が環境の変化に弱いことから、特に影響を受けやすいそうだ。
・絶滅未満の”機能上の絶滅”
スイス、バーゼル大学のユリアーン・デ・ボス氏は、こうした絶滅データは注意深く編纂(へんさん)されたものだが、それでもなお問題を過小評価しているだろうと話す。
彼が指摘するのは、”機能上は絶滅”している種だ。つまり、もはや植物園の中にしか存在しなかったり、野生で今後も生き延びるには個体数が少なくなり過ぎてしまった植物があるということだ。
完全にこの世から消えてしまったわけではないからといって、そうした種がまともな状態にあるとはとても言えないだろう。

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・絶滅種特定の難しさ
なお、ある植物が絶滅したかどうか断定するのは案外難しい。自然の風景は比較的短期間でがらりと変化するために、種の絶滅が確かなことなのかどうかは、広範な追跡調査を行わなければ判断しづらい、とデ・ボス氏は説明する。
だが、絶滅してしまったと考えられている植物種の捜索を目的とした、包括的な調査を行える資金や時間を持つ研究者はほとんどいないのが現状だ。
デ・ボス氏も似たような経験をしたことがあるそうだ――ただし、反対の意味においてだ。
彼は、ある文献に紹介されていた黄色い花を咲かせるベゴニアのDNAを調査するために、カメルーンに赴いたことがある。しかし、その数十年前の研究で紹介されていた地域を訪れてみると、まるで違う風景が広がっていた。
References:nature / upiなど/ written by hiroching / edited by parumo