「うつ」はなぜ起こるのか 精神医学の世界的権威が挑む新理論 (2/2ページ)

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そして体力を温存して回復に専念するためになるべく動かなくなる。孤独に過ごす危険に対応して周囲を警戒するために睡眠時間を削ることもするだろう。そのような進化を遂げた動物や人間は、そのDNAを子孫に残しやすかったのではないか、というのである。

さらに、この進化論的な考え方は、「ストレスがうつを誘発する理由」も説明する。炎症には、体内の免疫細胞を活性化させ、外部から細菌などが侵入したさいに、すばやく迎撃するという機能がある。だから、争いに巻き込まれそうになったり、天敵に襲われそうになったりして、傷を負うことが予想されるときに、あらかじめ炎症を起こして免疫を活性化しておけば、生存確率を上げられるだろう。
つまり、危険を察知して、恐怖や不安などの心理的社会的ストレスを感じたときに、身体に炎症を起こすことは、進化的に有利に働いたと考えられるのだ。

この仮説については、まだ科学的な精査が必要とするものだ。だが、最近の研究では、人を軽いストレス状況下に置く実験(聴衆の前でスピーチや暗算をさせる)で、被験者が実際に炎症を起こすことが確かめられている。このことは、職場でのプレッシャーや、幼少期の虐待、離婚などのストレスが炎症を起こさせ、その炎症がうつ病を起こすという連鎖が存在しうることを示唆する。
うつの発症には多くの場合、きっかけとなるイベントが存在するが、そこでも炎症が重要な役割を果たしているかもしれないのだ。

本書は免疫学と精神医学の垣根を取り払おうとする、野心溢れる一冊である。ただ、著者自らが述べているように、本書は、精神医学界でもまだ異論がある、現在進行形の研究を紹介したものだ。この点を踏まえて、批判的な視点を持ちながら読むことが、この本の読者の態度として求められるだろう。
近い将来、ブルモア氏の指摘が、そしてこれらの研究が具体的な治療法に結びつくことを期待したい。

(新刊JP編集部)

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