西郷隆盛の弟・西郷従道には刺青があった?刺青師の間で伝承のように語られるエピソードを紹介!

Japaaan

西郷隆盛の弟・西郷従道には刺青があった?刺青師の間で伝承のように語られるエピソードを紹介!

西郷従道(さいごう じゅうどう/つぐみち)は、西郷隆盛の実弟です。歴史のドラマや小説では隆盛が注目されがちですが、従道は海軍の元帥にまで上り詰めたほどの政府の重鎮。

その重鎮の背中に、実は刺青があったというエピソードを今回はご紹介いたします。

維新後の政府を支えた西郷従道

西郷従道は、1843年に西郷吉兵衛の三男として誕生。長兄が隆盛、次兄が吉二郎です。幼少の頃は剣術や兵学を学び、薩摩藩主・島津斉彬に茶坊主として仕えます。

その後、還俗して尊王攘夷や倒幕の活動に参加するようになり、薩英戦争や戊辰戦争を経験しながら各地を転戦。

西郷従道(wikipediaより)

兄・隆盛が西南戦争に敗れて自害した後も政治の中枢に関わり続け、陸軍や海軍の重要な役職を勤めながら新政府を支え続けた功労者です。

そんな重要な人物である従道ですが、新政府誕生以前は薩摩の密偵として活動していたとか。

弁天お雪と呼ばれる女刺青師と恋仲に

密偵時代、従道は吉三と名乗り、弁天お雪と呼ばれる女性と恋仲になります。お雪はかなりの美人で艶っぽい雰囲気でありながら、背中には迫力のある弁天様、両腕には牡丹の模様がある女刺青師でした。

吉三は、同じく刺青師だったお雪の父親に刺青を施してもらっていたのです。侍でありながら刺青を入れたのは、密偵として市井に紛れるためだったのでしょう。そのため、お雪には正体を明かしていません。

吉三の刺青とは、背中一面に花和尚魯智深大蛇退治(かおしょうろちしんだいじゃたいじ)、両腕には昇り竜・降り竜だったそうです。魯智深は水滸伝に出てくる登場人物。渾名を花和尚といい、現在でもこの花和尚魯智深が蛇退治をする刺青があります。

魯智深(wikipediaより)

しかし刺青が完成する間近に、吉三が行方不明になります。おそらく、薩摩から連絡が来て姿を消したのでしょう。

吉三が自分の前から姿を消したあともお雪は彼を想い続けますが、借金を苦にして自害した父親の負債を抱え込むことに……。

易聖・高島嘉右衛門の予言

借金で身売りしなければいけないという状況の中、お雪を助けた人物がいました。名前を高島嘉右衛門といい、あまり知られていませんが、横浜を作ったとまで言われるほどの大物です。

嘉右衛門は事業をしながら易にも秀でており、「易聖」と呼ばれ多くの予言を残しています。その嘉右衛門によると、お雪には「万人を救う相がある」とのこと。

女性の身でそのようなことができるはずがないと判断した嘉右衛門は、おそらく恋仲になった吉三が救うのだろうと思い、さらに易を立てて占います。出た卦は「天火同人」。

同人、先に号咷し而して後に笑う。大師克ちて相遭う。
引用元:「横浜」をつくった男~易聖・高島嘉右衛門の生涯~

大師とは戦を意味しているので、後に大戦を迎えて吉三は勝利を収め、お雪と再会を喜び合うのだろうと嘉右衛門は予言をしたのです。

嘉右衛門は数多くの事業に関わりながら、あまり表に出るようなことはせずに国を想いながら活動した人物でした。そのため、お雪を救うことは国を救うことに繋がると思ったのでしょう。

予言通りにお雪と吉三は再会

その後、明治維新を経て新政府になると、流浪に出ていたお雪は横浜に帰ってきます。そして嘉右衛門に紹介された料亭の女将に身の上話をすると、女将は自分の料亭に出入りしているお客を思い浮かべます。

そのお客は政府の高官でありながら、花和尚魯智深大蛇退治の立派な刺青を彫っているのです。

イメージ画像(写真ACより)

思い悩んだ女将は嘉右衛門に相談。2人の仲を占った結果、この上ない良い卦が出たことで女将は早速、その高官・西郷従道を訪ねていくのです。従道は喜び、ずっと探していた愛しい人と再会を果たします。

吉三は自分の本名・西郷従道をそこで初めて名乗り、彼の提案によって完成間近だった従道の刺青を仕上げ、お雪は刺青師を引退することに。日陰の身ではありますが、従道のそばに仕えるようになったのです。

さいごに

この話は刺青師の間で伝承のように語られていると、作家・高木彬光が著書「「横浜」をつくった男~易聖・高島嘉右衛門の生涯~」で記しています。そのため、実話かどうかは定かではありません。

ただし、従道の背中に刺青があったという記録は残っていませんが、嘉右衛門が占った通り、従道は初代海軍大臣になり日清・日露戦争を勝利へと導いています。

占いの的中率にも驚かされますが、想い続ける2人の強い繋がりにも感動を覚えるエピソードだと言えるのではないでしょうか。

参考書籍:高木彬光「「横浜」をつくった男~易聖・高島嘉右衛門の生涯~」(2009年)

日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan

「西郷隆盛の弟・西郷従道には刺青があった?刺青師の間で伝承のように語られるエピソードを紹介!」のページです。デイリーニュースオンラインは、西郷従道入れ墨幕末明治時代カルチャーなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る

人気キーワード一覧