参詣が楽しくなる!お寺の案内板によくある「開山」と「開基」の違いを紹介

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参詣が楽しくなる!お寺の案内板によくある「開山」と「開基」の違いを紹介

近所のお寺さんにお参りした折、案内板を見ていた観光らしき方々が、こんな会話をかわしていました。

粟船山常楽寺(鎌倉市大船)の山門にて。

「この『開山(かいざん)』と『開基(かいき)』って何のこと?」

「さぁ……?」

その場で割り込んで講釈を垂れるのも野暮なので黙っていましたが、確かにお寺の案内板には必ずと言っていいほど表記されている「開山」と「開基」。

今回は、この両者の違いについて紹介したいと思います……と言っても、実はそんなに難しい話でもなく、最初に結論を言ってしまうと

【開山】初代住職
【開基】メインスポンサー

程度に覚えておけば十分……なのですが、それだけではあまりに味気ないので、もう少し話を続けたいと思います。

開山(かいざん)とは?

寺院とは仏教における修行の場であり、俗世からなるべく隔絶された環境が望ましいのは言うまでもありません。

「この地を修行の場とする」

そこで多くの場合、日本国土の7割以上を占めている山地が候補地として選ばれる(※)のですが、最初に森林を切り拓いて(山を開いて)仏法を求めた者、との意味で初代住職を「開山」と呼ぶのです。

(※)実際には平地や海辺であっても寺院を「山」とみなして初代住職を開山と呼びます。

ただし、宗祖(宗派の元祖。教祖)のみを「開山」と呼ぶ浄土真宗や曹洞宗などの例外もあります。

開基(かいき)とは?

さて、山を開いて仏法を求めるまではいいのですが、実際には先立つものがなければ、立派な寺院は建立できません。

もちろん洞窟に籠もったり草庵を結んだりしてもいいのですが、なるべく有力者の庇護を受けた方が布教にも好都合。

古来多くの有力者が、功徳を求めて開基となった(画像は北条泰時、Wikipediaより)。

という訳で、寺院の建立に際して基礎を開いた(その資金を提供した)有力者、つまりメインスポンサーを「開基」と呼んだのでした。

だから開山は僧侶なのに対して、開基はその多くが武士や貴族などの有力者がなっています。

まとめ

さて、改めてお寺の案内板を見てみましょう。

この粟船山常楽寺(ぞくせんざん じょうらくじ)の場合、開山は退耕行勇(たいこう ぎょうゆう)、開基は幕府の三代執権・北条泰時(ほうじょう やすとき)となっています。

ただ一軒だけだと「ふーん」くらいにしか感じないかも知れませんが、開山は多くの場合において高名な僧侶を招くため、何軒も参詣する内に「あ、この名前は見たことがある!」「ここでも開山を務めたんだ!」などと感じ入る楽しみが湧いてきます。

同じく、開基についても有名な武士や貴族の名前がしばしば出て来るので、「ここのお寺は彼が建てたのか」「信心深い人だったんだなぁ」など、意外な一面が見えてくるかも知れません。

古くから人々の心のよりどころとして、暮らしの傍近くにあったお寺がつなぐ歴史の縁(よすが)を、こんなところからも感じて頂けましたら幸いです。

※参考文献:
須藤隆仙『仏教用語事典』新人物往来社、平成五1993年4月

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