遺骨の所有権や相続は誰になるのか?麻原彰晃元死刑囚の遺骨の行方は?

心に残る家族葬

遺骨の所有権や相続は誰になるのか?麻原彰晃元死刑囚の遺骨の行方は?

1989年の坂本 堤弁護士一家殺人事件、1994年の松本サリン事件、1995年の地下鉄サリン事件など数々の凶悪事件を引き起こして、日本だけでなく世界に大きな衝撃を与えたオウム真理教の教祖麻原彰晃こと松本智津夫元死刑囚は2018年7月6日死刑執行され、遺体は9日に火葬されたが、その遺骨は1年1か月が経過した今、どうなっているのだろうか。

■当初は四女が引き取り散骨すると伝えられていたが

関係者によると麻原元死刑囚は死刑が執行される直前に、遺体を四女に引き渡したいと拘置所職員に言い残していたとのことで、連絡を受けた四女は「遺骨を粉にして、太平洋に散骨する」との方針を明らかにしていた。

後継団体などに遺骨が利用されることを防ぐためで、費用負担など国に支援を求める要望書を提出していたが、法務省は「国ができるのは、本人が要望する人に遺体を引き渡すところまで」としている。

なお四女は教団とは決別し、両親と「縁切り」をしている。(四女は自分の推定相続人から両親を除外するよう横浜家裁に申し立て認められた。)
四女の代理人、滝本太郎弁護士も「麻原の遺骨は信者にとっては仏舎利(釈迦の骨)で、誰の元にいくかは大変な問題。妻や子供らに渡してはならない。」と指摘。散骨する場所が後継団体の信者らの「聖地」となる危険性もあるため「広い太平洋に船から散骨したい。」と話していた。

元オウム真理教の幹部で現在「ひかりの輪」代表上祐史浩氏も「公共の安全から考えれば、理想は四女の代理人が主張する海への散骨だと思います。」と述べている。

■一方、妻と長女と四女を除く子供たちも遺骨の引き渡しを要求

四女の遺骨引き取り意向に対し、妻、次女、三女、長男、次男の5人は「麻原元死刑囚の精神状態からすれば、特定の人を引き取り人として指定することはありえない。」と異議を唱え、法務大臣と東京拘置所長あてに遺体の引き渡しを求める要望書を提出した。

三女は「母親(妻)が遺骨を引き取るべきだ。父の神格化のために遺骨を利用することはない。後継団体があるから誤解が続く。解散してほしいとすら思う。」と、後継団体のアレフとの関係を否定したが、公安当局は妻と三女がアレフからかつて生活支援を受けていたこともあり、関係が続いていると見ている。

■遺骨は誰が引き取るのか?遺骨の所有権や相続はどうなる?

そもそも生きている人間の身体に対する所有権はない。奴隷制を否定してきた近代社会で、人身売買につながる所有権の設定は認められないからだ。しかし、遺体になればモノとなり、所有権の問題が発生する。民法第897条では祭祀に関する権利の承継について規定している。

1 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰するべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰する者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

遺骨は系譜、祭具及び墳墓に準じて祭祀承継者のものとする学説が多数である。祭祀主宰者が誰になるかは(1)被相続人の指定(2)慣習(3)家庭裁判所の決定という優先順位になる。

■麻原彰晃元死刑囚の遺骨は今どうなっているか

結局のところ、現在は上記の(3)家庭裁判所の決定の手続きが取られている。2018年12月、四女は東京家裁に麻原元死刑囚の遺骨などの所有権の承継者を決める審判を申し立て、今も妻側との間で審判が続いているとのことだ。

また、麻原元死刑囚の衣服や本などの遺品も、まだ拘置所に残されていて、今後、引き渡しをめぐり争われるとみられている。家裁では当事者双方の主張を踏まえて祭祀承継者を指定することになるが、宗教の世界では、教祖の遺骨やそれを安置する墓は極めて重要な存在であり、家裁も慎重に時間をかけて検討するであろうから、今回の審判は長期化するものと見られている。従って麻原元死刑囚の遺骨はまだ当分の間、東京拘置所のなかで厳重に保管されることになるだろう。

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