超深部起源ダイヤモンドが明かす月の年齢に匹敵する本源マグマの存在(オーストラリア研究)
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地表から400キロ以上も深い地層で形成されたダイヤモンドによって、長きに渡って地質学者らが疑ってきたことが明らかになった。
その疑惑とは、地球の内部のどこかに、40億年以上も前の本源マグマが大量に隠されているのでは? ということだ。
そのマグマの貯留層の位置・大きさ・中身といったものについては、現在も議論が交わされている。
しかし超深部起源ダイヤモンドのおかげで、今、地質学者はおそらくは地球「最古の残り」で「比較的乱されていない」物質に迫りつつある。
・ダイヤモンドはタイムカプセル
「ダイヤモンドは、既知のものとしては一番硬く、壊れにくい天然の物質です。そのため完璧なタイムカプセルであり、地球内部を覗き込むための窓にもなってくれます」とオーストラリア国立大学の地球化学者シュゼット・ティメルマン氏は話す。
激しい火山の噴火によって地表まで運ばれたダイヤモンドは、地球内部の様子を伝えてくれる貴重な生存者だ。浅い部分で形成されるダイヤモンドとは明らかに異なっており、地球深層部を探る数少ない手がかりとなってくれるのだ。
ブラジルで採掘された 起源ダイヤモンド。地球と月が衝突した時代のヘリウムガスが捕らえられている。image credit:Graham Pearson
・原始のスープが地球の奥に隠されている?
地殻と高温で熱された核との間で圧縮されているマントルは、膨大な量でありながら、直接見ることはできず、詳しく研究をするのは不可能に近い。
今日では、その大部分は固体であると考えられているが、かねてより、まだ地球による攪拌作用を受けていない原始のスープがどこかに残されているのではと推測されてきた。
この説が初めて提唱されたのは1980年代のこと。火山の溶岩に含まれるヘリウム3同位体とヘリウム4同位体の比率が異常なまでに高いと判明したのがきっかけだ。
その比率は地球に衝突した非常に古い隕石のそれによく似ていた。
このことから、この溶岩は、地球内部の奥深くに隔離され、地球が誕生して以来大きくは変化していない化学的な貯留層に由来するものではないかと推測されるようになった。
最近の研究では、この太古のヘリウムの痕跡は、地球のホットスポットでもとりわけ熱い部分によって地表まで運ばれてきたことが示されていた。しかし、そうした手がかりは火山の近くでしか見つからないために、本当の起源をはっきりと断定することはできなかった。
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・本源マグマの証拠
だが、このほど、ブラジルのジュイナで採掘された24個の超深部起源ダイヤモンドの解析から、地球の奥底に本源マグマが存在する証拠が得られた、とティメルマン氏らによって発表された。
そのダイヤモンドには、地球と月が衝突した時代にまでさかのぼれるヘリウムガスの痕跡が残されていたのだ。
したがって、問題の同位体パターンは、このダイヤモンドが形成された場所か、あるいはそのさらに下にある太古の貯留層に由来するということになる。
ブラジルのジュイナ地域のダイヤモンドの電子顕微鏡画像image credit:Suzette Timmerman
ティメルマン氏によれば、本源マグマの存在だけでなく、それが存在する深度を限定することもできたという。
超深部起源ダイヤモンドは、地下410~660キロの深さにある遷移層で形成されることがわかっている。ということは、貯留層があるのは410キロよりも深いところだと推定されるのだ。
この発見は『Science』(8月16日付)に掲載された。
References:inverse / phys/ written by hiroching / edited by parumo