やくみつるの「シネマ小言主義」 期待にたがわない!『カメ止め』次回作「イソップの思うツボ」 (1/2ページ)
2018年最大の話題作となった映画『カメラを止めるな』の上田慎一郎監督の次回作。みんなが期待して待っている分、相当なプレッシャーがあったかと思います。『カメ止め』の助監督を務めた中泉監督。そしてもう1人、スチールを担当した浅沼監督。なんと、異例の3人体制で演出した作品が、ついに公開です。製作期間3年とあったので、『カメ止め』のヒット前から構想されていたのかもしれませんね。彼らの創造力にはまだ大きな可能性があるということでしょう。
さて、『カメ止め』もそうでしたが、今回も「ネタバレ厳禁」です。題名の『イソップ〜』も、妙に可愛い動物キャラになっている美少女3人のポスターも、何のヒントにもならないと申しておきましょう。何しろ、試写会の案内にもごていねいに「3家族の正体について」「各登場人物が山小屋に集まって以降の後半の流れ」を解禁留保情報として、念押しされているほど。だから、このコラムでも展開は何も申し上げられないのが残念ですが、一つだけ、冒頭からの何気ない母子の団らんなど、ちょっと間延びしてるんじゃ? と思うエピソードですら、あとできっちり回収されていきますので、気を抜かずに見て、記憶に残していただきたい。「なんかこの家、玄関の照明がやけに薄暗いなあ」と気になっていたら、そんなことすら確かな伏線になっていました。
前作は後半のあっと驚くどんでん返しが評判でしたが、さすがに2度は同じ手を使えない。でも、何かやってくれるに違いない…と思っていたら、期待にたがわず!! です。
以前、上田監督が前作のインタビューで「100年後も面白がらせる作品を作りたい」と話されているのを読みました。次回作を期待され、全く違うテイストで期待を超えていくあたりは、故・伊丹十三監督を彷彿させます。伊丹監督は、芸達者な役者陣をずらりと登場させましたが、本作は有名どころといえば、佐伯日菜子ぐらい。昨今のホラー映画に欠かせない佐伯さんが出てくるだけで、画面の雰囲気がおどろおどろしくなるから、いいスパイスになっています。あとは、主役に新人を抜擢するなどインディーズ感はそのままに、相変わらずのスピード感とグルーブ感。観客は渦に巻込まれていきながら、結果として日本人が最も好きなテーマに落とし込まれていく。実にお見事です。