「悪質あおり運転」30万円の慰謝料も取れる!? 全国“悪魔ドライバー”公開

日刊大衆

写真はイメージです
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 最近、日本で問題視される危険運転。自分がその被害に遭わないためにも押さえておくべき極意を徹底解説!

 日本中に衝撃を与えた「あおり運転事件」は読者の記憶にも新しいことだろう。2019年8月10日、茨城県守谷市の常磐自動車道で、あおり運転を行い、車を停止させた男が、降車して「殺すぞ!」などと叫びながら相手の車に歩み寄り、窓越しに数発、運転していた男性の顔面を殴打した傷害事件だ。一連の報道で犯人の宮崎文夫容疑者(42)は、今回の現場以外にも、愛知県の高速道路、静岡県の国道などでも、あおり運転をしていた常習犯だということも判明した。こんな“悪魔ドライバー”に遭遇したらと思うと、おちおち車の運転さえできない、と思うドライバーもいることだろう。

 そこで本誌では、専門家3人に、その“対処法”を指南してもらった。「そもそも、あおり運転とは車間距離を異常に詰める、幅寄せする、進路を譲るように強要する、追い回す、割り込んで急ブレーキをかける、不必要なハイビーム、パッシング、クラクション、さらに暴言や脅迫する行為を言います」

 こう解説するのは、あおり運転の映像事例に詳しい『(財)日本自動車研究所』(茨城県つくば市)の北島創主任研究員(博士=工学)。北島氏によれば、程度の差こそあれ、あおり運転の被害を受けた経験のあるドライバーは実に約7割とのデータもあるというから、まさに人ごとではない。そもそも、“悪魔ドライバー”は、どんな車に乗っている傾向があるのか。「保険会社の調査結果を統計的に見ると、セダンタイプで黒い車が約3割ともいわれます。これに対し、被害者側は丸っこいコンパクトカー、ハッチバックだったり、軽自動車が多く、色は白が多いようです」

 要するに、あおる側は自分より小さい車を標的に、あおり運転を仕掛けている傾向があるというのだ。

 一方、今、ネット上で多くのアクセスを誇る悪質ドライバーの情報投稿サイト『Number Data』では、約9000件の投稿を「車両」「車種」「ナンバー」別などにランキング。最も多く投稿されている悪質運転車両は軽自動車となっている。集計、分析の方法などに差があるため、どちらが正しいと一概には言えないが、どちらの情報も一つの参考にとどめておくのがいいだろう。このサイトのランキングを踏まえ、前出の北島氏は、「車種がプリウス、アルファード、ナンバーが1桁か8が複数あるものの投稿が多い傾向があります。地域に関していえば、人口が多い名古屋や大阪がランクインするのは当然でしょう。ただし、このデータを1万台当たりで見ると、ほぼ、どこの地域も1件程度ですが、つくばは4~5件となりやや高く、浜松、熊谷もやや高い結果になります」と分析した。

■あおられる側があおる理由を与えていることも

 次に北島氏は、あおり運転を行うドライバーの心理状況についても解説する。「あおる側は、日常のストレスを、あおり行為で晴らしているとも言われます。何度かあおり行為が成功すると、ストレス発散にあおり運転、という習慣がついてしまう。あおり運転自体は、直に人を殴るわけではないし、いざとなれば逃げることもできますから、行うのに抵抗が少ないんです。また、あおる人は心理学の専門用語で“敵意帰属バイアス”といい、自分の身に降りかかったことを、故意にやられたと過度に思い込む傾向があることにも注意が必要です」

 冒頭の宮崎容疑者も、被害者の車が遅く、進路を妨害されたと感じ、怒りを募らせたと供述している。

 これに対し、実は、あおられる側が悪魔ドライバーにあおる理由を与えていることもある、と注意を呼びかけるのは道路交通評論家の鶴田光秋氏だ。「方向指示器を出さない急な割り込みや低速運転、急ブレーキを何度もかける、高速道路で追い越し車線をずっと走っているなどは、まさにあおる理由を与える運転と言えるでしょう。あおり運転を行う人も、何もしていない相手には、まず仕掛けません。なので、たとえ故意でなくても、あおる理由を与えないようにすることが重要です」

 運転初心者(ペーパードライバー)や、判断が遅くなりがちな高齢者ドライバーなどは、結果的に急な割り込みをしてしまうことが多くなるという。

 急ブレーキにしても同様だ。また、乗り慣れているドライバーでも、悪意なく急ブレーキを踏んでしまうことがあるため、常に安全運転を心掛ける必要がある。「特に、他車との相対的な速度差を、いかに感じ取れるかが大切です。一般道でのっそり運転しているのもそうですが、高速道路の追い越し車線で、本人は120キロで走っているから問題ないと思っていても、もっと速い車からは遅い、故意に妨害していると思われてしまうこともあるんです。要するに、流れを読んで、車線変更をするなど、常に周りの環境に目を配ることが重要なんです」(前出の北島氏)

■裁判で勝つには?

 では、こうした点に注意しても、不幸にも、あおり運転に遭遇してしまった場合は、どうすればいいのか。約20年前に、あおり運転の被害に遭い、それに対抗して民事訴訟を提起し、勝訴した経験を持つ『横浜ユーリス法律事務所』(横浜市中区)の工藤昇弁護士に話を聞いた。「私があおり運転の被害にあったのは、1998年10月のある日の午後1時すぎでした。妻と当時3歳の長男を乗せて、神奈川県鎌倉市内から東京都八王子市方面に向かうために国道を走行中、若い男が一人だけ乗ったオープンカー(マーチ)に後ろから何度も異常に車間距離を詰められたんです。赤信号で停止した際に、相手は降車して私の車の窓を叩き、対応を求められました。約8分間にわたる、こうしたあおり行為は、非常に恐怖を覚えました」

 幸い、交差点で相手は右折。大事には至らなかったが、なぜ、被害に遭ってしまったのか。「私は弁護士という職業柄、制限速度を特に順守する必要があったんです。事件現場となった道路は片側1車線で、停車する幅の余裕もなかったので、後続の車を先に行かせることができなかった。そのため、後ろについた車が腹を立ててしまったんでしょう」(工藤氏)

 工藤氏は、異常接近する車に対し、助手席の妻にビデオ撮影を依頼。結果として、このビデオが裁判での勝利につながったという。「相手は裁判で、先に進路妨害を受けたと話していました。また、異常接近については、妻に依頼したビデオ撮影に気づき、それに抗議するためにやったと主張していました」(前同)

 裁判ではその後、相手は上告までしたが、工藤氏の主張が通り、請求した10万円満額の慰謝料が認められた。「当時はまだあおり運転は注目されておらず、刑事告訴は保留しましたが、刑事罰に問えそうなら、そちらを優先したほうがいいです。今なら私の事例程度なら、30万円ほどの慰謝料は取れるのではないかと思います」(同)

 民事の場合は損害賠償請求にならざるをえないが、刑事の場合なら、道路交通法違反(車間距離不保持、安全運転義務違反など)はむろん、もっと罪の重い暴行罪、強要未遂罪にも問えうるとも。「刑事告訴したほうがいい理由の一つに、相手の特定をしなくていい点があります。民事の場合は自分たちで相手の氏名を特定し、なおかつ自分の名前なども公表しなければなりません。刑事であれば氏名不詳でも告訴可能です。とはいえ、民事の場合でも、弁護士に協力を仰げば相手のナンバーさえ分かれば、その車の所有者を特定することができます」(同)

■窓は開けず、相手をしないのが一番

 また、実際に被害に遭ったからこそできる、こんなアドバイスも。「私の場合、相手が車窓を叩いてきた際、“話すことは何もありません”とドア越しに答えました。窓は開けず、相手をしないのが一番です」(同)

 工藤氏のケースではビデオ撮影が決め手になった。ともかく、あおり運転には証拠を残すことが重要だ。「まだ8台に1台ほどの設置率ですが、あおり運転に遭った際のことを思えば、後ろも撮影できるドライブレコーダーの設置がお勧めです。設置していることを示すシールを貼るなど、設置が分かれば、それだけで抑止効果にもなります」(前出の北島氏)

 全方位撮影(幅寄せ被害の場合の車の左右も撮れる)のドライブレコーダーは5~6万円するそうだが、万一のことを思えば決して高くはないだろう。

■あおり運転防止5か条

 最後に、今回登場してもらった3人の専門家も作成に関わったという、「あおり運転防止5か条」を紹介しよう。

(1)わざわざ、あおられる理由を与えないこと(前述の低速走行など)。(2)あおられてしまったら相手をせず逃げる。(3)悪質なあおりを受けたら、その場で立ち向かわず、後で法的に訴える。(4)ドライブレコーダーを活用し、無理ならスマホのカメラなどで対応を。(5)あおり運転は悪質犯罪で、あらゆる法令を駆使して取り締まる。

 あおり運転は絶対に許されない危険行為だ。正しい対処法を知って、根絶しよう!

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