「僕らの女神、小泉今日子を1位にする」。80年代アイドル親衛隊を描いた純度100%の青春物語 (2/2ページ)
一つは、クリエーティブ・ディレクターである著者が、小泉さん自身からアイドル親衛隊との交流の話を聞き、当時の当事者にも取材をした上で、実話を基にして執筆しているということだ。
作者は小泉さんから当時交流のあった親衛隊の少年との思いがけない別れの話を聞き、彼らの姿を残したいと小説にしたのだという。
もう一つは、80年代当時の文化や歌謡曲の歌詞が、物語のいたる場所に散りばめられている点だ。
例えば、直と高階が駅前のしょぼくれたゲームセンターでハマり込んだゲーム「平安京エイリアン」。女性アイドルファンがこぞって読んだ月刊グラビア誌『ボム!』(現在は『BOMB』という名前で刊行中)。『トップテン(ザ・トップテン)』『夜ヒット(夜のヒットスタジオ)』『ベストテン(ザ・ベストテン)』といったテレビ番組。
さらに、各話にはその舞台となる週の『ザ・ベストテン』のランキングが出てくる。当時リアルタイムで番組を見ていた読者は、物語とその頃の自分を重ねることだろう。
本書の刊行にあたり、小泉さんはこんなコメントを寄せている。
彼らの青春の中に私がいたこと。
当時の孤独も、怒りも、すべて引っくるめて懐かしすぎて泣きました。
――小泉今日子
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1984年8月2日、その日放送された『ザ・ベストテン』で、小泉さんは番組で初めて1位を獲得。『オートリバース』においては、クライマックスの始まりを告げるモチーフとしてこの日のランキングが登場する。
「小泉今日子を1位にさせる」と意気込んで親衛隊に入隊したものの、隊のあり方に疑問を抱く直と、ただトップを目指し喧嘩に明け暮れる高階は、次第に疎遠になっていった。
そんな2人が有楽町の喫茶店で落ち合い、久しぶりに話を交わす。抱える問題を解決するために高階に縋ろうとする直だが、その別れ際、高階から真っ赤な血がとめどなく流れていることに気づく。
当時、青春時代を送っていた人はもちろんのこと、今、アイドルを追いかけている人も当時の親衛隊が抱いていたメンタリティや“推し具合”について共感できる点は多いだろう。
そして、青春はどこかで終わりを迎えるもの。2人にとっての青春の終わりと、大人として成長していく姿を、とくと味わってほしい。
(新刊JP編集部)