横山剣、SMAPやTOKIOにも楽曲提供する “ 歌うメロディ・メイカー”が語る「昭和の車と女」

日刊大衆

横山剣、SMAPやTOKIOにも楽曲提供する “ 歌うメロディ・メイカー”が語る「昭和の車と女」

 あるときは東洋一のサウンド・マシーン、あるときは横浜代表のハンサム、また、あるときはサーキットを駆ける狼――。その正体は千の顔を持つ、クレイジーケンバンド横山剣(59)。芸能界屈指の車好きとして知られる彼に、本誌は特別インタビューを敢行。懐かしいオッサン車から世界的名車、それにまつわる愛と追憶を語るうち、話はグッとくる女性へと飛び……。めくるめくノンストップトークを、どうぞ!

――今まで乗ってきた車は何台ほどですか?

横山「数はちょっと数えたことないですけど、3桁……はちょっと言いすぎか。40台ぐらいかな。歴代のバンドメンバーが全員車好きでバイク好き。一緒にツーリング行ったりとか、気持ち悪いぐらい仲良いんですけど、本牧ガレージっていうところにバイクや趣味の車を置いていて、そこでメンバーと車の話と……」

――現在は何台ほど?

横山「街乗りできる車は3台で、クラシックカーが2台、あとはレース専用車のBMW2002tiiと日産ブルーバード510SSS、合計7台ですね。レースは勝てなくてもビリでも楽しいです。ただ、1周遅れぐらいはしょうがないですけど、2周遅れ、3周遅れは本当にキツい。“走るシケイン”って言われちゃうから。今、言われてるんです。

 お気に入りは、BMW2002tii、通称マルニですね。『おぎやはぎの愛車遍歴』って番組で、過去に乗ってた車に乗れるって話で、マルニで本牧ふ頭のほうを1周したら“これだ”と思ってもう止まんなくなって、買っちゃったんです」

――車は見た目で?

横山「うん、けっこう見た目でグッときて、スペックを無視して買って大後悔とか。すごい面倒くさい車だった、とかありますね。一目惚れで買っちゃうんですよね。よく考えて、左ハンドルはもうやめようと思ってたのに、納車する直前に“そういえばこれ……”と思ったら左。

 止まんなくなっちゃってるんだよね。他にもっといろいろあったはずなのに、そのときはブルーバードクーペ510しか心の中にない。で、実際に車を見たら“あっ、もっと選択肢あった”と。後から思う。

 でも、欠点があればあるほど思い出になって、悔しいけど心に残ります。頭に来ますからね。

 アルファロメオ1750GTヴェローチェって車があって、これはもう、すごかったですね、もう、わがままで。そのかわり、いいときは滅茶苦茶良い走りするんですよ。うっとりする。ちゃんとアタリが出て。機嫌が悪くて“ダメだ今日”みたいな日は最悪です。セカンドカーとか持ってない時代だったんで。仕事に電車で行くのはいいんですけど、精神的にけっこうダメージ受けますよね。車が動いたとしても、デートで女性を隣に乗っけてても、メーターの針に目が行っちゃう。ハラハラして、女の子がなんか言っても“ああ、そだね”なんて返事。会話どころじゃない」

――ひどいですね。女性のほうには目もくれず。

横山「うん。でも、もう1回、もう1回乗りたい。レースで乗りたいですね。一番のポテンシャルを発揮できる場面で乗りたい。

 でも“アルファダンスってあるよ”って言われたんです。コーナリングで踊るんだって。おっかないです。調教ですよね、本当に。だから乗りこなせたときの征服感が忘れられない……女性と同じです。それで良い音、良い声なんですよ。ブウゥーンッブンブンブブブウゥゥンブーーゥウンッ!!(見事な音程でギアが上がっていく様を再現描写する剣さん)

 やっぱりF1とかでも、フェラーリのマシンが、モナコのトンネル出たシケインのところでシフトダウンする音、トンネルの中の音も全然違うんですねえ」

■ユーミンの『COBALT HOUR』にいすゞベレット1600GTが

――横山さんの曲にも何度も登場するいすゞベレット1600GTには、特別な思い入れが?

横山「子どものときですね、ミッキー・カーチスさんが、レース活動のときはブライアン・カーチスって名前で、いすゞの契約ドライバーだったんです。プロの、本物のお金もらって。

 レーサーって子どものアイドルだったんすね。コマーシャルにも出ていて、僕の母親も大ファンだった。僕は小学生でしたけど、行くとレーサーに会える場所をリストアップして、今日は飯倉のキャンティに行ってみよう、ホテルオークラのカメリアってとこにいるぞ、とかって待ち伏せしたりして。

 生沢徹さんとか福澤幸雄さんとか、それぐらい人気あった。当時、サッカーより人気ありましたね。モータースポーツのほうがメジャーでした。ペレとか釜本以上に。

 そうそう、ベレG(ベレット1600GTの愛称)。ですね、ベレGといえば、應蘭芳さん! 僕は『OH! LANGFANG』っていう楽曲を、ちょうど20年前『gold fish bowl』ってアルバムに入れたんですけど、まあ、子どものとき、應蘭芳に憧れてたんです。『プレイガール』にも出てて。スカイダイビングはやる、スキューバダイビングもやる。それでレーサーだし。まさにハンサムなプレイガール。僕が子どものときは『マグマ大使』のモルって奥さん役で出ていた。そのモルが異常にセクシーで、ボディコンシャスなパッツンパッツンの衣装着てて……。子ども心にもちょっと儚く興奮しちゃった。男勝りで格好良いと思っていたその應蘭芳さんを思い出して、自分の妄想の中で、元町を黄色いベレットGTで走ってる、と歌ったんですね。そうしたら、應蘭芳さんご本人からファックスが来て“本当に黄色いベレG乗ってました”って書いてあったんです。“元町商店街とかよく、そのベレGで行ってました”って。びっくりしちゃって。

 それから、ユーミンさん!『COBALT HOUR』で、たぶん日本で初めてベレGを歌詞に入れて。ベレGは、あの頃のヒップな人たちが乗ってた車だったんです」

■トヨタ車は太もも美人

――8月に出たクレイジーケンバンドのアルバム『PACIFIC』にも「車と女」という曲があります。

横山「もう、何をいまさら、って感じですね。やっぱり切り離せないところがありますよね。そこでも歌ってますけど、僕、女性の扱いと車の運転、どっちも下手っていわれたことがありまして……これはショックですね。傷つきますね、うん……」

――自動車メーカーを、それぞれたとえるとしたら?

横山「わりと60年代、70年代のトヨタ車は流線型ですよね。トヨタ2000GT、S800、セリカ1600GT……太もも美人というか、片山由美子さんのような。プレイガールで、日本のブリジット・バルドーですよね。そんな肉感的なイメージ。

 日産はもう、本当にものすごい直線的なシェイプが多かった。四角いっちゅう感じ。日産は侍。男ですね、短髪の。実際、トヨタのドライバーはわりと長髪でソース顔が多かったんですが、日産はドライバーも短髪で侍でした。

 いすゞは浅岡重輝さんとか、米村太刀夫さん、ミッキー・カーチスさんと、育ちの良さを感じられるドライバーが多かったですね」

――レーサーの皆さんに憧れていたわけですが、人間の魅力は、何に由来すると思われますか。

■堺正章や近藤真彦と一緒に

横山「僕が好きな人は、勝新太郎さんとか夏木陽介さんとか、チャーミングなおじさんです。なりたいと思いますね。堺正章さんもすごくチャーミングで。もう、ギャップがないんですね。

 堺さんには2011年に、クラシックカーのラリー『ラフェスタ アウトゥーノ』に誘っていただいて。出るしかない、と思っていたときに出会ったのがオースティン・ヒーリー100-4という車。衝動買いしてしまって……。レースは明治神宮から軽井沢、越後湯沢、箱根、葉山、横浜をめぐる3泊4日の日程で、堺さん、ジローラモさん、近藤真彦さん、鈴木亜久里さん、といった方々とご一緒しました。

 堺さんは、鹿児島まで一緒に車を探しに行ってくれたんです。2人で飛行機乗って一緒に探しましょうって。一人でチケットを買ったりとか絶対にしないタイプだと思うんですけど。そのときは事務所にも頼らず、全部、自力でやっていただいて。あの恩は一生返せないですね。納車のとき、エンジン不調だったんですが、業者さんに“コレじゃ剣さん乗るのにかわいそうです”って言ってくれて。助かりましたね」

■車の中で曲を作って

――曲を作るのも車の中なんでしょうか?

横山「車で書くことが多いですね。ワンフレーズだったり、ベースラインだけ浮かんだり、ドラムこんなリズムでいこうっていうのは、スタジオ行く前に浮かんだりします。僕は本牧を当たり前のようにいつも走っててありがたみを忘れてたんですけど、ちょっと前にコンテナを乗せたトレーラーが横切ったとき、“あ、俺コンテナ好きだったな”ってことを思い出したんです。そうしたら、その日のうちにバーッと広がって、港湾周辺のいろんな思い出や感じてることがどんどん楽曲になって、片っ端から録音していったら18トラックのアルバム『PACIFIC』になった。もう勢い。勢い発進、急停車です」

――記憶が引き金になったということですね。

横山「60年代とか70年代の記憶のほうが、昨日何食べたかより鮮明です。子どものときは脳が新品ですから記憶力良いわけです。どうでもいいことまでずっと覚えている。車もそう。やっぱり、魂をわしづかみにされたんです」

――常にエレガントな物腰ながら、エネルギッシュな横山剣。爆走を続ける、そのエンジンを見習いたい!

よこやま・けん 1960年、横浜生まれ。81年、それまでスタッフとして関わってきたクールスRCのヴォーカル兼コンポーザーとしてデビュー。97年にクレイジーケンバンドを結成。堺正章、和田アキ子、SMAP、TOKIO、松崎しげる小泉今日子中井貴一八代亜紀ら数多くのアーティストに楽曲を提供する “ 歌うメロディ・メイカー”。8月7日にニューアルバム『PACIFIC』をリリース。

「横山剣、SMAPやTOKIOにも楽曲提供する “ 歌うメロディ・メイカー”が語る「昭和の車と女」」のページです。デイリーニュースオンラインは、横山剣小泉今日子自動車近藤真彦和田アキ子エンタメなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る

人気キーワード一覧