化粧では欠かすことのできないファンデーションの原料と死化粧

心に残る家族葬

化粧では欠かすことのできないファンデーションの原料と死化粧

答えの一つに「土」がある。土というと乱暴になるが、地中の粘土鉱物から出来ているミネラルファンデーションというものがある。私は、陶芸好きが昂じて、土を採取している方からこんな話を聞いて驚いた。流石に単純に地面を掘っていくとファンデーションの原料が出てくる訳ではなく、本当に極々限られた鉱山からでしか出ないようである。その土はとても滑らかで粒子が細かいようだ。キラキラとしており、色も土には思えない程キレイで、女性がうっとりするほどのようだ。

■メイクアップと鉱物との歴史

実際、土は黒・褐・黄・赤・灰・青・白などの色が組合わさったものが存在し、世界中で同じ色の土というのは存在しないようである。

化粧は古代の人からすでに行っており、メソポタミア遺跡から白粉が発掘されている。また、エジプトでは紺色の鉱石をアイメイクで使用していたとされている。古代から上級階級の人から白い肌という美の象徴の意識があるようで、鉛白という白色顔料が好んで使われていた。

日本では、弥生から古墳時代の記録から赤い土を顔や体に塗った記録が残っている。その後は大陸からの文化が入り、飛鳥時代から徐々に白粉を使った化粧をするようなり、歴史の資料でよく見かける日本の女性の美という形になっていくのである。白粉を使って白い肌を作り上げる化粧は江戸時代まで続いたようだ。白粉は鉱物由来のものと植物由来のものとあり、美への追求とともにその時代その時代で様々な素材を使用していたとされる。

しかし世界的に白粉に鉛が入っているものが18世紀から利便性と価格の安さも相まって普及し、鉛中毒の問題が発生していた。日本で完全に製造中止になったのは昭和初期のようだ。ただ、美しいものの基準は時代ともに白から自然な色へと変わってきている。上記で記したミネラルファンデーションは雲母(マイカ)といわれる天然鉱物を主成分とされ、アメリカで誕生した。そもそもは手術や火傷の跡を消す目的だったようだ。

■祖母が若返った死化粧・エンゼルメイク

92歳で息をひきとった祖母は足腰が悪く室内で過ごす事が多かった。老年は家計簿をつけるのが趣味と言う地味な性格でもあった。そのためか、祖母の化粧した顔を見た事が数年なかった。

死化粧は死体という概念を忘れさせてくれるアイテムである。エンゼルメイクとも言われるほど、生前以上に綺麗な顔立ちに整っている。

口を開けたまま亡くなったため、綿を詰めて自然の型に戻し、明るい頬紅。さらに口紅は遺族の希望で明るい色に変え、さらに若々しく感じた。

特に使用している化粧品は残っていなかったため、すべて葬儀社の方にお任せをしたら、一番ファンデーションを顔に塗ることに凝っていたように見えた。亡くなった後の肌の変化は生前のものとは顕著に色が変わるのだろう。顔に白布を被せるとは言え、やはり古代から続く美への意識を旅立つ直前まで労ってあげたいものである。

■人と土の関わり

「土壌は万物の母」と言われるように生きし物の根源に当たるものである。地上で動物の糞や死骸がいつの間にかなくなっているのは、目に見えない微生物が地上の有機物を分解させ、土の中の栄養素に変えている働きをしているからでえある。「人は土から生まれ、土に還る。」という言葉をよく耳にしないだろうか。「土に還る」を辞書でひいてみると、「有機物が完全に分解され、土壌の一部と化すこと。」と出てくる。

ファンデーションが土から出来ていると聞き、私は祖母の葬儀で火葬されお骨が窯から出てきた際の塵が祖母の体なのか、棺なのか、もしくはファンデーションなのか判別がつかない時、「土に還る」という事を考えさせられた。

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