『凪のお暇』で話題となった“毒親” 凪の母のように毒親化してしまう人の“心の闇”は (2/2ページ)

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夕が凪の事情よりも、自分の世間体や環境を優先して金銭を要求したように、他者愛よりも自己愛が抜きん出るあたりは、毒親自身が発達段階で自己愛が健全に育っていない可能性がある。例えば、愛情不足であったり、虐待を受けた経験があるなど、毒親もまた健全に育てられていない可能性があるということだ。毒親は、毒親によって育てられたからこそ毒親になり得たのである。

 また、毒親に育てられた、あるいは崩壊家庭で育った経験を持つ大人は総じて“アダルトチルドレン”と定義されるが、前述の斎藤氏によれば、アダルトチルドレンは子どもの頃から親の機嫌を気にする子であったり、誰かの世話を焼こうとする大人びた子であったりすることが多いそうだ。このことから、凪も典型的なアダルトチルドレンであると言える。このアダルトチルドレンがまた、毒親と化してしまう。

 一般的にも、親子間の思考のくせは連鎖しやすい。もちろん例外も存在するが、幼少のころから親によって組み込まれた思考パターンを払拭するという作業は困難を極めるものだ。さらに、毒親と子の関係性は、特に母娘間で形成されることが多いと言われている。共感性や順応性が高いという特徴を持つ女性同士ならではの現象である。

 いずれにせよ、毒親として非難されている夕は、彼女なりに苦難の人生を歩んできたはずだ。そして、女性視聴者から多くの同情や共感を集めている凪は、将来的に夕と同じく毒親になる可能性をはらんでいる。負の連鎖を食い止めるためにどうするべきかは、個々の家庭の事情に応じて考える必要がありそうだ。

文:心理カウンセラー 吉田明日香

参考文献:日立財団Webマガジン「みらい」VOL.2「親子関係の解剖学〜その闇に迫る」
斎藤学「毒親と子どもたち」
https://www.hitachi-zaidan.org/mirai/02/paper/index.html

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