地球外知的生命体が太陽を周回する小惑星から地球人を監視しているかもしれない(アメリカ物理学者の主張)
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それは「ラーカー(Lurker)」と呼ばれている。数百万年も前より、宇宙から私たち地球人をひそかに監視している存在のことだ。
これはたんなる与太話などではなく、アメリカの物理学者ジェームズ・ベンフォード氏が『The Astronomical Journal』(9月20日付)に投稿した論文で主張している内容だ。
突飛な話に聞こえるだろう。だが、この説は地球外知的生命体探査(SETI)コミュニティに昔からある推測に基づいている。
・宇宙にばらまかれた探査機「ブレイスウェル・プローブ」
1960年、スタンフォード大学の電波物理学者ロナルド・ブレイスウェルは、「高度な銀河コミュニティ」なら宇宙に自動で作動する探査機をばらまき、これらを通じて宇宙に存在する自分たち以外の生命を観察し、おそらくはコミュニケーションを図ることも可能だろうと提唱した。
これについてベンフォード氏の論文はこのように説明している。
近くに設置された探査機は、我々の文明がそれを発見できるくらいのテクノロジーを発達させるまで待ち続ける。そして、ついにコンタクトが図られれば、リアルタイムの通信機器となるのだ。
それまでは、我々の生物圏や文明について、定期的に報告し続けてきた。
この探査機は「ブレイスウェル・プローブ(Bracewell probe)」と呼ばれ、その後も検証が重ねられてきたが、現時点でそれが存在するという証拠は見つかっていない。

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・監視に最適な場所は?
今回、ベンフォード氏が論じているのは、我々を極秘に観察するブレイスウェル・プローブ——すなわちラーカーを設置する太陽系内の理想的な場所についてだ。
彼によると、極秘かつ長期的に自動で稼働しなければならないラーカーを設置するなら、岩石の地球近傍天体のうち、「共有軌道天体(co-orbital object)」と呼ばれるものがふさわしいだろうという。
共有軌道天体は、その名のとおり、太陽の周囲を地球と同じような軌道で公転する天体だ。また太陽のみならず、重力によって地球とも結びついており、太陽を周りつつも地球のそばに寄り添う。
実際に発見された共有軌道天体はそれほど多くはないが、地球に一番近いものとしては、NASAが”地球の相棒"と呼ぶ小惑星「2016 HO3」が知られている。
「2016 HO3」は、2016年に発見されたアポロ群に属する小惑星で、球から見ると月のように周囲を公転しているように見える準衛星の一つである

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共有軌道天体は常に地球と同じような軌道にあるために、地球を監視するには絶好のポイントである、とベンフォード氏は主張する。
これらの地球近傍天体は、しっかりとした天然の天体から我々の世界を眺める理想的な方法になるだろう。ここならば、安定した固定場所、隠れ蓑として使えるリソースが手に入る。
ならば地球外知的生命体を探索しているSETIのコミュニティは、共有軌道天体を優先的に調査してみてはどうだろうか? というのがベンフォード氏の主張だ。

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・地球外知的生命体がいなくても興味深い発見が
異星人の監視機器は別にしても、共有軌道天体を調査することには意味がある。なにしろ、これまで20個未満しか発見されておらず、この天体についてはほとんどわかっていないのだ。
もしかしたらベンフォード氏の本音は、ただこの天体を調べたいだけなのかもしれない。そして、その願いは案外早く叶うことだろう。
中国はすでに2016 HO3からサンプルを回収するという、野心的な10ヶ年計画を発表している。これは地球の相棒についてもっと知る貴重な機会となるはずだ。
もちろん、そこで異星人の監視機器が発見される可能性は現実的に考えれば相当に低いだろう。
だが、そこに到達するのがそれほど大変ではないというならゴーだ! というのが物理学者の性というものだ。異星人が見つからなくても、きっと面白い発見があるだろうから。
References:Alien 'Lurkers' Could Be Covertly Watching Us From Space, Physicist Says / Looking for Lurkers: Co-orbiters as SETI Observables - IOPscience/ written by hiroching / edited by parumo