土星の衛星「エンケラドゥス」に生命が誕生している可能性。噴出する水蒸気に水溶性の有機物を確認(NASA)
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土星の第2衛星「エンケラドゥス」の地下にたたえられている海で、生命が誕生するために必要となる基本的な素材が発見されたそうだ。
NASAによる解析結果が示しているのは、エンケラドゥスを覆う氷の下にある海から宇宙へと吹き上げられる水蒸気には有機化合物が含まれているということだ。
有機化合物内の窒素と酸素はアミノ酸が作り出されるうえで重要な働きを担っており、そしてアミノ酸は地球上の生命とって不可欠なタンパク質の素である。
エンケラドゥスの内部海に生命の材料がある可能性についてはかねてから疑われてきた。実際、昨年も今回とは別の有機分子が検出されている。
しかし、水に溶けたものが見つかったのは今回が初めてだ。
これはとても大切なことで、なぜなら内部海にこうした化合物が存在するということはそこで化学反応が起きてアミノ酸が作られているかもしれないからだ。
・カッシーニ収集の化学組成データから有機化合物の存在が判明
エンケラドゥスは、地殻の隙間から海水と氷のジェットを定期的に宇宙へと吹き上げている。
今回発見された窒素や酸素を含む有機化合物の存在は、土星探査機・カッシーニによって収集されたそうしたジェットの化学組成データから明らかになった。
NASAによるとそれらは地下に存在する海に溶けていたが地表の水と一緒に蒸発し、凝結してはやがて凍りついて氷の地殻になるという。
こうした化合物は、エンケラドゥスでも地球と同じような生命の誕生へといたるプロセスが存在するかもしれないことを示すサインだ。
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・エンケラドゥスにあるかもしれない熱水噴出孔が生命を育む鍵に
地球の海の奥底では、海水がマグマと混ざり合って海底の隙間から湧き上がっている。こうした場所を「熱水噴出孔」といい、そこからは370度もの熱いお湯が吹き出している。
熱水噴出孔から吹き出す水素をたっぷりと含んだ熱水は化学反応をうながし、有機化合物はアミノ酸へと変化する。アミノ酸はさらに互いに合体しあってタンパク質となる。
タンパク質は、生命の基本となる遺伝情報を複製するために欠かすことができない物質だ。このプロセスによって、生命は日光の助けを借りることなく発達することが可能になる。氷におおわれたエンケラドゥスは、せっかく届いた太陽の光を宇宙へと反射してしまう。
したがってエンケラドゥスに生命が誕生するとすれば闇の中で発達せねばならないため、このプロセスがとても重要である。
光に乏しいエンケラドゥスに存在するかもしれない熱水噴出孔が、地球のそれと同じ役割を果たしてくれるかもしれないのだ。
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・海面に浮いているだけでなく水に溶けた有機化合物を初めて確認
今回のNASAの研究グループは、昨年も有機分子を検出することに成功していた。
しかし、それは水に溶ける分子ではなくエンケラドゥスの海面に浮いていたものだと考えられている。化合物が熱水噴出孔と作用して生命が誕生するためには、それらは水に溶けていなければならない。
水に溶けた有機化合物もまたエンケラドゥスに存在するのかどうか不明だったが、今回それがはっきりと確かめられた形だ。
この研究は『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society』(10月2日付)に掲載された。
References:NASA / Monthly Notices of the Royal Astronomical Society / written by hiroching / edited by usagi