死を招く健康診断「体に悪い検査・良い検査」

日刊大衆

写真はイメージです
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 異常を察知するためのものが、逆に不調をもたらす原因に!? 医師たちが警鐘を鳴らす「医療業界の真実」!

 会社で健康診断(健診)を受けるという人も多いことだろう。「企業は1年に1回、社員に定期健康診断を受けさせることが、労働安全衛生法などで義務づけられています。決算や繁忙期を避けて、10月前後、あるいは5月前後に行う会社が多いですね」(健康情報誌ライター)

 会社勤めをしていない人であっても、加入している健康保険組合や、各自治体が行う健診を受けられるケースもある。自己負担なし、あるいは安価で自分の健康をチェックできるのだから、こんなにありがたいことはない。しかし、この健診、実は“受けるだけで安心”というものではないのだという。『医者に聞けない検査値のホント』(大和書房)の著書もある、予防医学が専門の岡田正彦・新潟大学名誉教授(医学博士)は、こんな衝撃的な事実を語る。「定期的に健診を受ければ、病気を早期に見つけることができますし、心理的にも安心できるかもしれません。しかし、実際に健康に有効かどうかは別の話なんです。健診を毎年受けているグループと、受けていないグループを追跡調査したところ、差がないどころか、受けたほうが総じて寿命が短い、という結果が出ています」

 岡田氏によれば、英国のある調査では、健診を受けた人のほうが、寿命が平均8.6歳も短かったというケースさえあるというから驚きだ。では、なぜ、そんなことになるのか。残念ながら、その理由を明らかにできるだけの調査結果はまだないようだが、医学博士の中原英臣・山野医療専門学校副校長は、こう分析する。「健診での放射線被曝などのリスクに加え、検査の結果、正常なのに患者にされ、必要のない薬を投与されたことによる副作用が影響していると考えられます。特に日本は“健診の正常値”が突出して厳しい。結局、健診は医師と製薬会社を儲けさせるための手段ではないかと思えるほどです」

 中原氏がその一例として挙げたのが「血圧測定」だ。健診では定番の検査だが、その正常値は長らく「上160、下95未満」だった。ところが、1993年に「上140、下90未満」と厳しくなり、さらに今年からは「上130、下80未満」に変わったのだという。「この基準に何も根拠はないんですが、最悪の場合、降圧剤を飲まされることになるわけです。米国の政府委員会の基準では150以上が高血圧で、それも60歳以上が対象。59歳以下については医学的根拠がないとして、基準値が設定されていません」(前同)

 定期健診の検査項目といえば、身長、体重、血圧の計測、尿と血液の検査、心電図、胸部X線(レントゲン)、腹部エコー検査、問診、聴診といったところが基本だろう。しかし、これらの検査にも、有効性に疑問符がつくものが含まれているのだという。「厚労省研究班が発表した報告書(05年)によれば、糖尿病発見に尿検査は不適切。心筋梗塞の発見に心電図は無意味。胸部X線は肺がん発見に有効との証拠なし……などと結論づけているんですよ」(同)

■胸部X線検査やバリウムも

 さらには、驚くべきことに、受ければ「カラダに悪い」とさえ思われる検査もあるそうだ。その筆頭に挙げられるのが、胸部X線検査だ。

「よほど経験を積んだ専門医でない限り、早期の肺がんなど見つけることは至難の技。また、間接撮影(レントゲン写真を撮られる検査)は、放射線の被曝が多いという問題もある。このため、米国では間接撮影装置の使用はとっくに止めています」(同)

 また同様に、胃のX線(バリウム)検査もリスクが大きいという。まず、検査時に飲むバリウム自体に、副作用リスクがあるのに加え、「胃のX線検査は、放射線の被曝量が胸部の6倍以上とされています」(同)

 健診に、このような“落とし穴”があると知れば、もう受けたくないと感じる人もいるだろう。

 だが、冒頭で述べたように法律で義務づけられた健診もあり、従業員が拒否することもできない。

「拒否したことを理由に教員が減給処分となり、最高裁まで争った事例がありますが、教員の負けでした。ただ、要検査の結果を職場に報告することまでは義務づけられていません。過剰治療が心配ならば、再検査を受けないという選択肢はあります」(前出の岡田氏)

■問診の重要性

 もっとも、不安がつきまとう項目があるとはいえ、自身のカラダをしっかり検査することが、長寿の近道であることに変わりはない。大事なのは、どんな検査を受けるか。つまり、「カラダによい検査」をしっかり押さえておけばよいのだ。受けるべき重要な検査――。それはまず、健診の検査項目でもある「問診」だ。前出の中原氏は、問診により、病が早期発見できた実体験があるという。「私は、2011年に中咽頭がんが見つかりました。ずっと違和感があって、知り合いの医者を受診。問診中に喉の周りを触診し、これはおかしいということで判明したんです」(中原氏)

 105歳まで生きた、聖路加国際病院名誉院長・日野原重明氏はかつて、「心臓の病気は、問診だけで6割分かる。聴診器も加われば7割分かる」と、口にしていたという。ただ、ここで注意したいのは、集団健診の際は、問診の時間が限られてしまうケースが多いということ。「だから健診以外で、個別に検査を受けに行ってもいい。個々のデータに基づいてきちんと問診し、過剰検査や投薬をしないような医者を、かかりつけ医にできればベストです。健康長寿を目指すうえで、これは適切かもしれませんね」(岡田氏)

 前出の中原氏も、問診の重要を説く。「体の不調を感じても、たいていは1週間もすれば治ります。ですから、不調が2週間以上続いたら必ず受診すること。これが健康のための、医師や病院との一番の良い関わり方です」

 他に受けるべき検査といえば、「脂質異常の検査」。これも、健診ではおなじみだろう。コレステロールは、動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や狭心症、脳卒中の原因となる。シニア世代ならば、特に気をつけなければいけない項目だ。この検査では、LDLコレステロール(悪玉)、HDLコレステロール(善玉)、中性脂肪などの数値が検出できる。

「中でも、LDLコレステロールが一番重要で、加えて中性脂肪の値も高ければ要注意です。ただし、単にLDLコレステロールの値が高いだけでも、心筋梗塞は起きません。喫煙、糖尿病、高血圧、ストレスといった要因も影響するのが普通です」(岡田氏)

 ちなみに、LDLが増えると動脈硬化の原因となる一方、HDLのほうは、逆に動脈硬化を防ぐ働きがある。仮に、トータルのコレステロール値が高めだったとしても、LDLが低く、HDLが高ければ、危険性は薄い。要は、両者のバランス次第なのだ。

■がん検診はやったほうがいい

 さて、次にオススメするのは「尿中微量アルブミン検査」。これは、尿を採取して調べる検査で、腎臓の状態を確認できるというもの。健診にある「尿タンパク」の検査と同じように思えるが、その精度は大きく違う。医療ジャーナリスの牧潤二氏は、こう解説する。「アルブミンはタンパク尿の主成分。糖尿病や高血圧による腎障害の極めて初期に、微量のアルブミンが尿中に排出されるんですが、それを検出する検査です」

 すでに、腎臓にはっきりとした疾患がある状態なら、健診の尿タンパク検査でも検出はできる。しかし、「尿中微量アルブミン検査」のほうは、“微量”でも検出できるのがポイント。つまり、早期発見が可能となるのだ。健診での項目にはないが、別途受ける価値のある検査だろう。

 もう一つ、牧氏が勧めるのは、がん検診。その中でも、胃がん、肺がんと並んで患者数が多い「3大がん」の一つ、大腸がんを発見するための「便潜血検査」だ。

「コストが高いため、会社の健診にがん検査はまず含まれていません。裏を返せば、それは極めて有効ながん検査がまだないということでもあります。その点、厚労省が推奨できると唯一断言しているのが便潜血検査。便を取って、大腸がんによる出血の有無を調べるもので、副作用もありません」(牧氏)

 健診で必ずあるとは限らないが、この検査も別途受けることは可能だ。

 いい検査をしっかり受けて、健康をモノにしよう!

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