ラプンツェル並みのガチロンゲが大流行。ヴィクトリア時代の女性にとって豊かな長髪は「女らしさ」の象徴だった

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ラプンツェル並みのガチロンゲが大流行。ヴィクトリア時代の女性にとって豊かな長髪は「女らしさ」の象徴だった
ラプンツェル並みのガチロンゲが大流行。ヴィクトリア時代の女性にとって豊かな長髪は「女らしさ」の象徴だった

image credit:Messy nessy chic

 まさにヴィクトリア朝時代(1837年~1901年)の女性を思わせる、おとぎ話の主人公がいる。そう、あの髪の長~いラプンツェルだ。

 「ラプンツェル(髪長姫)」は1790年にフリードリッヒ・シュルツによって書かれたものが原作だが、1812年にグリム兄弟が再発表してジョージ王朝時代に語り継がれた。

 そのころは長く絡まりそうなほどの髪の房をプードルのように頭の上にまとめあげる髪型が大流行りしていたが、のちのヴィクトリア朝時代には女性たちは長い髪を解いて下まで垂らすようになったのだという。
・中流~上流階級の女性たちの間で長い髪を垂らすのが大ブーム!

 中流や上流階級の女性たちの間に、長い髪を解き放つリアルラプンツェルが現れ始め、美の流行が変化した。

 長い髪を結わずにそのまま垂らす陸の人魚たちのような姿が、社会のステータスとなったのだ。

 一方で、貧しい階級の女性たちは、長い髪を保つことはできなかった。病気がはびこり、衛生環境が良くなかったため、そんなに長い髪を維持することができなかったのだ。

 下層階級の女性たちが生きていくには髪を切って、現金に変えるしかなかった。

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・長い髪をケアする方法は石けんがいいのか卵黄を塗りつけるのか?

 女性たちは、髪を洗うのに石けんや酢、紅茶、ローズマリー、卵黄、ラム酒を使った。

 どれが効果的なのかは意見のわかれるところだったようで、当時人気のあった女性のための健康や美容に関する出版物に掲載された方法もさまざまだ。

 1879年に出版された『Decorum』は、

髪は石鹸や水で洗うだけでいい。それ以外のことは必要ない

という。

 しかし、1869年に出た『Godey's Lady's Book』には、

長い髪を洗うには、水で攪拌した卵黄を髪に塗りつけ、のちにぬるま湯で洗い流す

とある。

 引きずるほどの長い髪は、裕福な階級の女性たちにとって女らしさの表われだった。

 また女性の長い髪は、ステータスにとらわれているかあるいは相当な髪フェチのヴィクトリア時代の男性たちにとって性的な関心をそそられるいい刺激だった。



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image credit:Messy nessy chic

・美しいロングヘアを持つ7人姉妹が熱狂的ファンを獲得し社会現象に

 19世紀には、7人姉妹で有名なサザーランドという家があった。

 サラ、ヴィクトリア、イザベラ、グレース、ナオミ、ドーラ、メアリーといういずれも長い髪が自慢の姉妹たちが、地球最大のショーとして宣伝された「バーナム・アンド・ベイリー・サーカス」の旅に参加してから世界的な現象を引き起こした。

 彼女たちは歌手や音楽家だったが、大衆を魅了したのは彼女たちの歌のハーモニーではなかった。全員で11mもの長さになる美しい髪の房を見るために、人々は押し寄せたのだ。

 姉妹たちの髪は熱狂的な人気が出て、ファミリービジネスとなった。彼らは、髪がふさふさ伸びるというトニックまで作り出して大儲けしたのだ。

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・フケを防ぐシャンプーや髪染めなどサザーランド姉妹の商品がヒット

 姉妹たちは世界中を旅してこのトニックを宣伝し、フケを防ぐ新たなシャンプーや髪染めまでを作り続けた。

 ヴィクトリア時代の抜け目ない事業家たちは伝説的なロングヘアを売りにして、売れる商品を作り出した。

 1893年に姉妹のひとりが亡くなるとその穴埋めにオーディションが行われ、アンナ・ルイーズ・ロバートが姉妹たちの仲間になった。

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・髪を短く切ることは抵抗の行動だとして女性パワー運動の先駆けに

 狂騒の1920年代、世の女性たちが従来の基準を拒み、因習や重荷になっていた長い髪から自由になろうと運動し始めると、7人姉妹たちの名声も影ってきた。

 1927年、オペラ歌手のメアリー・ガーデン

女性たちが自由になる道を妨げている多くの足枷のひとつである長い髪を切ろうと考えている

とコメントしている。

 髪を短く切ることは抵抗の行動だと考えられ、女性パワー運動の最初の具体的な動きだった。

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image credit:Messy nessy chic

 とはいえ長い髪を女性のステータスシンボルだと考える“ラプンツェル的サブカルチャー”はまだ今日でも世界中で見られる。

 「世界一長い髪の村」として知られる中国の古い集落から、ナミビアの部族の編み込みロングヘアまで、現実のラプンツェルたちには人々を魅了するなにかがまだまだあるのだ。

References:Messy nessy chicなど / written by konohazuku / edited by usagi
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