自分を正しく評価できず人を騙していると思い込んでしまう「インポスター症候群」その緩和に必要なのは親しい人以外の感情的なサポート(米研究)
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インポスター症候群や詐欺師症候群と呼ばれる心の症状がある。これを患っている人は、自分がまるで詐欺師のように感じてしまうという。
インポスター症候群の人は、自分の実力で成功を手にいれたにもかかわらず、他人を「実際よりも能力がある」信じ込ませること手に入れたと考えてしまうのだ。一般的に、社会的に成功した人たちの中に多く見られる症状である。
アメリカ・ブリガムヤング大学の研究グループによると、このインポスター症候群を緩和するには他人から感情面のサポートを受けるといいのだそうだ。
ただし、ひとつ注意点がある。家族や友人といった自分の親しい人たちを頼ってはいけないということだ。それではかえって症状が悪化してしまうのだとか。
相談するなら、自分が所属しているコミュニティとは違う人たちでなければならないのだという。
・自分の能力に疑いを持つようになった超優秀な学生たち
研究グループは20名の学生グループに対してインタビューを行った。彼らはかなり難易度の高い会計の集中コースを履修して、その初年度の単位を取得した学生たちだ。
それによると、ほとんどの学生は高校時代や大学の数年間で超優秀な成績を収めており、自分自身について優れた生徒というイメージを確立していた。
ところが問題の大学の集中コースを履修すると、自分が詐欺師であるかのような感覚を覚えるようになったという。
自分と同レベルの学生がほかにもたくさんいることに気がつき、自分が特に秀でた存在だと思えなくなったからだ。
インタビューでは、ほとんどの学生が自分の能力や自分自身について疑い始めたことを認めている。こうした心情を一番よく表しているのは、ある学生による次のコメントだ。
すごく頭のいい人たちばかり・・・でも、何もしないでここに入った人はほんの数人だけ。どうして私はここに入れたのかしら?みんなは私を受け入れてくれた?自分はきっと間違って紛れ込んだに違いないわ。
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・同じクラスの仲間から感情的なサポートを受けると症状が悪化
そうしたネガティブな気持ちを抱くようになってしまっても、外部の人間から感情的なサポートを受けると緩和されることがわかった。
実験では、15人中10人で自分が詐欺師であるという感覚が和らいだ。
一方、同じクラスの仲間からサポートを受けた場合はまったく別の結果になった。14人中12人が、自分が詐欺師であるという感覚が消えないばかりかそれがいっそう悪化してしまったのだ。
学生のコメントの中には「穴があったら入りたい」や「トイレで吐きたい」という激しい自己嫌悪を表すものもあった。
この研究が示唆しているのは、従来言われていたようにインポスター症候群の原因が性格などの個人に起因するものではなく、個人が置かれた状況に起因する心理学的な現象であるということだ。
そして、このことは200名の学生を対象に同じことを行った別の実験でも確認することができた。こちらの実験ではインポスター症候群が学生の成績とはほとんど関係がないこともわかっている。
「我々の発見によれば、個人の能力や成績よりも、社会関連要因のほうが詐欺師感覚に強く影響した」と論文で述べられている。
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・アームストロングでさえ自身を詐欺師のように感じていた!?
著名な英国人作家のニール・ゲイマン氏は、自身のある出来事について語っている。
数年前、光栄にもすごい人たちの集まりに招待されたことがあったんだ。アーティスト、科学者、作家、何かの発見者なんかが出席していた。ふと、こんなすごい業績のある人たちの中で、自分はなんて場違いなんだって思いがした。
そのように居心地の悪い思いをしていたところ、ゲイマン氏はある男性にこう話しかけられた。
ここにいる人たちときたらどうだい、俺はここで一体何をやっているんだ?みんな、すごい実績がある。俺なんか送られたところに行ってきただけだよ。
ゲイマン氏はこう答えたという。
何をおっしゃっているんです!あなたは人類で初めて月に行った人じゃないですか!
そして、彼は少し気分が楽になったそうだ。ニール・アームストロング氏でさえ詐欺師のように感じていたのだ。ほかの参加者もきっと同じに違いない、と。
この研究は『via=ihub" target="_blank" title=""Journal of Vocational Behavior』(12月号)に掲載された。
References:Science alert / via=ihub" target="_blank" title=""Journal of Vocational Behaviorなど / written by hiroching / edited by usagi