「人を殺すために生まれてきた」母親殺しの出所から僅か2年後に強姦殺人、男の歪んだ死生観とは【社会を震撼させた死刑囚たち】 (2/2ページ)

リアルライブ

この男は当時16歳で刑事罰対象者であったが、裁判所は「年齢的に見ても矯正は充分可能」として、男を中等少年院送致とする保護処分の決定を下した。男は僅か3年間で少年院を退院し、パチンコ屋で働くもすぐに退職。その後はパチスロ機を不正に操作して稼ぐ「ゴト師集団」に加入するも、うまくいかずにグループを離脱する。男は公園などに野宿する生活を送るようになるが、母親殺害の際に感じた興奮と快楽が忘れられず、その快楽を再び得るために犯行に及んだという。

 裁判で男は起訴内容を認め、2007年5月に男が望んだ通り死刑が確定する。男は反省の弁を一切述べずに、「さっさと死刑にしてほしい」と主張したという。

 裁判中に行われた精神鑑定では責任能力が認められた。男は精神鑑定の途中から心を閉ざし、多くを語ることはなかったというが、犯行の動機は男の半生にあるとの指摘がある。不幸な家庭環境、不遇な少年期、一度目の事件後の少年院送致の妥当性、退院後のサポート体制…。男が人間として成長していく過程で、真摯に向き合う人がいたら、こんな冷酷で残虐な事件は起きなかったのかもしれない。

 公判の被告人質問で、男は「人を殺すことと物を壊すことはまったく同じこと」と述べたという。弁護人が差し入れたノートにも「何のために生まれてきたのか、答えが見つからない。人を殺すため。もっとしっくりくる答えがあるのだろうか。ばく然と人を殺したい」と記すなど、反省はおろか、殺人への欲求が治まらない状況であることを記していたという。

 同事件を犯罪心理の目線から調査した法医学者の上野正彦氏の『死体の犯罪心理学』 (アスキー新書)によると、男は大阪姉妹殺人事件の検事に「16歳の時に母親を殺した際に返り血を流すためシャワーを浴びたら、射精していたことに気づいた」と述べたと記されている。この頃にはすでに抑え切れない殺しへの欲望が芽生えていたのかもしれない。

 「死刑でいいです」と言い放ったこの男は、他人の命はおろか、自分の命にも最後まで向き合うことができなかった。生まれた時から虐待され、いじめを受け、家庭でも学校でも社会でも人間関係を構築することができず、歪んだ精神状況のまま世に放たれた人間にとって、他人の苦しみや悲しみを理解するということは何よりも難しいことだったのではないだろうか。

 死刑確定後に男は弁護人に「生まれて来なければよかった」と呟いたという。死刑確定から2年後、異例の速さで死刑が執行され、男は25年という短い人生に幕を閉じた。人を殺すことにしか希望をもてなかった男の最後の望みは、自らの死だったようだ。

記事内の引用について
池谷孝司著『死刑でいいです―孤立が生んだ二つの殺人』 (新潮文庫)
上野正彦著『死体の犯罪心理学』 (アスキー新書)

「「人を殺すために生まれてきた」母親殺しの出所から僅か2年後に強姦殺人、男の歪んだ死生観とは【社会を震撼させた死刑囚たち】」のページです。デイリーニュースオンラインは、社会などの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る