本当の自分に辿り着くための過程を牛で表現した「十牛図」とは (2/2ページ)

心に残る家族葬

全体像ではないが、真の自分の姿というものを僅かながら見えたのである。ただ、まだ捕まえるのには距離がある状態である。

第4図「得牛」は牧人が縄で牛を捕らえた様子が描かれている。しかし、牛を捕らえる事は容易ではなさそうだ。牛は逃げようと暴れており、牧人は牛を抑制する事に必死である。真の自分を捕らえたが、真の自分と葛藤をしている状態である。

第5図「牧牛」は牧人が牛を手なづけて縄を引いて歩いている様子が描かれている。手綱が必要であるという事は、まだ牛と信頼関係は結べていないが、牛がおとなしくついて行っているという事は、真の自分に対してまずは寄り添ってみようとしている状態である。

■十牛図(第6図〜第10図)

第6図「騎牛帰家」は牧人が牛の背に乗って家に帰る姿が描かれている。しかも、牧人は牛の背で楽しそうに笛を吹いているのである。真の自分と一体になり、しかも楽しんでいる状態である。また、家に向かうという事は自分を見つける旅を終えるということも表している。

第7図「忘牛存人」は牧人が家に着き、牛を忘れてくつろいでいる様子が描かれている。牛は描かれてはいない。それほど、牛いわゆる真の自分を探していた事を忘れ、ありのままの自分として生きている状態である。

第8図「空」は円形の縁があるだけである。禅における書画の一つ「円相」が描かれている。牛も自分も全て忘れて執着から解放された状態である。

第9図「返本還元」は川と花が咲きこぼれる木という美しい風景が描かれている。第8図を得て外界をみていると美しい自然が目に入る。日々の暮らしに追われて真の自分を失ったが、旅を得て、真の自分を捕らえて、忘却し、自然のありのままに戻った状態でもある。

第10図「入鄽垂手」は恰幅のいい男性が着飾る事なく自然の姿のまま町へと向かう様子が描かれている。その男性とはと年月が経った牧人である。牧人は行く先で童子に笑顔でありのままの自分という教えを説いている。

■ 現在の牛との関わりから

牛の最大寿命は20年といわれているが、現在、日本の乳牛の5〜6年経つと乳量が減るため、肉として出荷されるそうだ。現在は食卓で製品としてみる事の方が多いように思うが、本来は昔から牛と人間との関わりは深いものがあったと思う。ただ牛乳を飲むのではなく、牛から牛乳という布施をいただいているという気持ちでいただくと、醍醐味を感じる事ができるかもしれない。

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