本当の自分に辿り着くための過程を牛で表現した「十牛図」とは (1/2ページ)
牛というのは、非常に人間と性格が似ているらしい。酪農家の家に住まわせてもらった時に、雌牛とその子どもであろう子牛を、離れ離れにしたことがあった。翌日、雌牛は隣にいるはずの子牛がいないことに対し、昼夜問わず悲嘆に感じる鳴き声で呼び続けていた。しかも、人が住んでいる母屋から雌牛の様子を伺うと、こちらを見ているのである。生き物全てそうかもしれないが、非常に感慨深いものがあった。
■牛の恵みが仏教での最上の食べ物
醍醐という古来の乳製品をご存知だろうか?これは、製法が今ではわからなく幻の食品と言われている。バターのようなヨーグルトのようなもので、ほのかに甘みがあるのだとか。そんな幻の食品が仏教の大乗経典の「大般涅槃経」にも記載されている。
「牛より乳を出し、乳より酪を出し、酪より生蘇を出し、生蘇より熟味を出し、熟味より醍醐を出す。醍醐は最上なり。もし服する者あらば衆病皆除く。あらゆる諸楽ことごとくその中に入るがごとく仏もまたかくのごとし。」
深い味わい、最上の味という意味とされる「醍醐味」は仏教用語で乳製品からきている。乳製品は古代から貴重なタンパク源であったと同時に最上の美味しい食べ物とされてきたのであろう。
■禅の教えに牛を用いて説いている「十牛図」
仏教では人の根底にある「真の自己」を牛で表した「十牛図」がある。それは牛との関わりから牧人が真の自分とは何かという悟りを開くまでのストーリーである。牛を真の自分の姿と例えており、牛は「真の自分」に置き換えてその図を見て欲しい。十牛図は中国の宗の時代に禅の入門書として描かれたもので第1~第10の図と詩の構成されている。
■十牛図(第1図〜第5図)
第1図「尋牛」は牛を探し始めた人が描かれている。その人は川沿いの野道を一人で途方もなく歩いている。探している牛というのは、牧人が真の自分の事を探し始めたという事である。
第2図「見跡」は牛の足跡を見つけた様子が描かれている。やっと険しい道のりの上で手掛かりが見つかった。真の自分とは何なのか、どこにいるのか迷っている道に灯がともった段階である。
第3図「見牛」は牛の姿を初めて見つけた様子が描かれている。