水が濁っていると、混乱した交尾によって新種を創り出してしまう魚の存在が確認される

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水が濁っていると、混乱した交尾によって新種を創り出してしまう魚の存在が確認される
水が濁っていると、混乱した交尾によって新種を創り出してしまう魚の存在が確認される

iStock / Borislav

 配偶者選びに失敗した人間なら、離婚という手がある。だが、シクリッドなら、その失敗が新しい種を誕生させる創生力になる。

 アフリカの淡水に分布するシクリッド(カワスズメ)には、種が違う相手であっても交尾するという習慣がある。

 コンゴ民主共和国とザンビア共和国に広がるムウェル湖での10年越しの研究によって、にごって視界の乏しい水の中に住むメスのシクリッドは、うっかり新しい遺伝子を取り込んでしまうことが明らかになった。

 

・視界不良の水の中で起きるハプニングが新種を生み出す

 「湖が形成された当時、水はにごって色をきちんと区別することができませんでした。そこで、メスはそれほど交尾相手の選り好みをしなくなったのです」とイギリス・ケンブリッジ大学の進化生物学者ジョアナ・マイアー氏は説明する。
 
 そのおかげで異なる水系出身のシクリッド同士が交尾し、両種の親から遺伝子を受け継いだ多種多様な子供が生まれるようになった。 

 こうして比較的短い間に爆発的に新種が登場することになる。今日、シクリッドは地球に生息する魚としてはもっとも多様なグループのひとつで、判明しているだけでも2000種以上が存在する。

 たとえばマイアー氏らはムウェル湖で40もの新種を発見した。だが、湖が形成されたおよそ100万年前、そこにはコンゴ川とザンベジ川からやってきたシクリッドしかいなかったのだ。

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・暗がりでお婿さん選びを間違ってしまうシクリッド

 研究室内で行われた実験では、シクリッドの交尾はメスに主導権があることが判明した。しかし面白いのは、薄暗かったり、オスの色がメスのものと似ていたりする場合、メスは交尾相手を間違って選んでしまうことだった。
 
 マイアー氏らは、こうした間違いは、数百万年前、シクリッドができたばかりのムウェル湖にやってきた頃から起きていたのではないかと推測している。
 
 交尾相手の選び間違いから誕生する雑種は、2種の遺伝子を持っているために、さらに多様化がうながされる。そして、それぞれ特定の環境にうまく適応できるものが、比較的安定した競争の中、生き残ってきたと考えられるようだ。

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・シクリッドのアダムとイブに連なる数百種の子孫たち

 DNA解析からは、今回発見された新しい魚たちが、コンゴ川とザンベジ川出身の祖先に連なることが判明している。

 「シクリッドの新種は、湖で手に入る食料資源をすべて利用できるよう適応しました。昆虫の幼虫を食べるもの、動物プランクトンや藻類を食べるもの、中には大きな歯を持つ捕食者も発見されています。」

 多くのシクリッドは最近、つまり過去数百万年かそこらのうちに進化したのだという。たとえばマラウイ湖では、200万年前に生きていた祖先から800種もの子孫が誕生している。ビクトリア湖なら、700種以上のシクリッドがここ15万年のうちに進化した。

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・雑種化が生物多様性の鍵か?

「私たちの研究は、雑種化が新種の進化の原動力であることを示しています」とマイアー氏は話す。

 「ムウェル湖という種の坩堝が、進化する新種間の相互作用を研究する滅多にないチャンスを与えてくれました。生態学的な機会が豊富にある新しい環境では、雑種化が生物多様性を増加させる好ましいものになることもあるようです。」

 この研究は『Nature Communications』(12月3日付)に掲載された。

References:sciencedaily/ written by hiroching / edited by parumo
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