世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第349回緊縮の王国からのエクソダス (3/3ページ)
つまりは、社会保障の負担について「国民の全世代で分かち合おう」という印象を国民に植え付け、社会保障の負担増を嫌がる(普通は嫌だろう)世代を「悪者」と化し、国民の分断を図ろうとするのだ。
自己負担倍増に対し、後期高齢者が反発したとして、
「高齢者の医療費を、現役世代が負担させられている! 許せるのか!」
「膨れ上がる高齢者の医療費のせいで、財政が破綻し、全世代が迷惑する」
「病院のロビーに行くと、高齢者のサロンのようになっている。医者にかかる必要がない高齢者が暇を持て余して病院に行っている」
といった、30年前から使われている陳腐なレトリックがマスコミをにぎわすことになるだろう。
この種のルサンチマン・プロパガンダに騙されてはならない。
そもそも、我が国の財政には問題はない。何しろ、インフレ率が相変わらず低迷し、政府の「貨幣(国債)」発行余力は高まり続けている。社会保障支出が増えたならば、普通に国債を発行すればいいだけの話だ。
むしろ、現在の緊縮路線は医療の供給能力を破壊し、将来的に「真の社会保障の危機」をもたらす。具体的には、医者が減り、看護師が減り、病院が減り、病院のベッドが減る。医療サービスの供給能力が不足すると、「カネ」を出したとしても、国民がまともな医療を受けられない時代が訪れることになる。
この手の「事実」を、国民が共有できるか否か。緊縮財政は「国民を殺している」という真実を理解し、一人一人が「緊縮の王国からのエクソダス(脱出)」を目指さねばならない時代なのだ。
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みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。