妻の「メンヘラ」に気づけなかった男の悲劇 (3/3ページ)
――お話を聞いた人の中で、稲田さんの心が一番痛んだ人は誰ですか?
稲田:実はその方の話は、この本には載っていないんです。期間限定でウェブには一旦掲載されましたが、その方の強い希望で今は読むことができません。
かいつまんで話すと、奥さんが精神的に不安定な人で、たびたび彼にモラハラをしていたのですが、それが半端じゃないレベルで、ひたすら耐え続けたというエピソードです。それは強く印象に残っていますね。
――いわゆる「メンヘラ妻」ですね。度合いにもよりますが、あまりにも精神的に不安定だと結婚生活を続けるのは難しいかもしれません。
稲田:ウェブ掲載時には、「なぜ結婚する前に、そういう奥さんの性質に気がつかなかったのか?」という意見が多く寄せられました。でも、モラハラ妻と結婚・離婚をした人は全員「気づかなかった」と言うんです。そんなバカなと思うでしょうが、「体験したことがないからそんなことが言えるんだ」と彼らは口を揃えて言います。その言葉は真実でしょう。
なぜなら、これから結婚しようとしている相手に重大な問題や欠陥があるなんて、認めたくないのが人間ですから。相手の態度やふるまいが明らかにおかしいと感じても、可能なかぎりポジティブに解釈し、問題を解決していこうと努力する人が多い。相手に何か問題点や懸念点があっても、「これを乗り越えれば夫婦になれるんだ」とがんばってしまうんです。逃げるという発想に至らない。
――わかります。「二人の間の問題は二人で解決していくのが理想」という価値観がありますね。
稲田:問題から逃げずに二人で話し合えば必ず解決できるはずだ、というね。困難から逃げるのは人間としてダメなんじゃないかという、幼い頃から親から受けた教育による刷り込みもあったりします。
人間としてダメになりたくないと願う生真面目な頑張り屋ほど、相手が抱える問題をなんとか努力して解決しようとしてしまう。そういう男性って、大抵はすごく優しい心の持ち主なので、余計にモラハラ妻に付け込まれてしまうんです。妻に悪気はないのでしょうが、無意識のうちに自分の不安定さを預けられる相手を選んでいるところがある。そのカップリングは悲劇としか言いようがありません。
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(聞き手・構成:山田洋介/撮影:金井元貴)