カエルの細胞から生体ロボットの作成に成功。プログラムで忠実に動く(米研究)

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カエルの細胞から生体ロボットの作成に成功。プログラムで忠実に動く(米研究)
カエルの細胞から生体ロボットの作成に成功。プログラムで忠実に動く(米研究)


 ロボットは基本的に生物を模倣して作られている。人工知能の登場によりそれはますます賢くなりつつあるが、科学者は今も生物を参考にしており、そしてそれが本当の意味では”生きていない”ということを理解している。だが、生物とロボットとの境界がついに曖昧になり始めたようだ。

 米バーモント大学とタフツ大学の研究グループが、カエルの生きた細胞からプログラム可能なロボットを作り出すことに成功したからだ。

 この生体ロボットはいわば人工生命体であり、驚異の自己修復能力を持ち、人間のプログラムした行動を忠実に実行するという。
・カエルの生きた細胞で作られた全く新しい生体ロボット

 開発された生きたロボットは、カエルの胚から皮膚細胞と心臓細胞を採取し、スーパーコンピューターが考案した形状に組み立てられたものだ。

 皮膚細胞によって4本足のある塊のような形状が保たれ、心臓細胞の鼓動がボディの推進力となる。

まったく新しい生体マシンです。従来のロボットとも既知の動物も違います。新しい種類の人工物――生きた、プログラム可能な有機体です。
(バーモント大学、ジョシュ・ボンガード氏)

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Sam Kriegman, UVM

・細胞のエネルギーで稼働する「ゼノボット」

 ロボットの大きさは1ミリほどで、細胞が採取されたアフリカツメガエルの学名Xenopus laevisにちなみ、「ゼノボット(xenobots)」と呼ばれている。

 実験では、ペトリ皿の中のゼノボットが、脂質とタンパク質という形で胚に蓄えられていたエネルギーを使って、数日から数週間も泳ぎ回れることが確認された。円を描くように泳ぎ、ペレットを中央に押しやることすらできたという。

 ゼノボットの設計はスーパーコンピューターの「ディープ・グリーン」によって行われた。

 その「進化アルゴリズム」が生体ロボットの無数の設計案を考案し、ある作業を達成するために一番ふさわしい形状をシミュレーションを通じて確かめる。これを数世代繰り返し、洗練させていったものが今回作られたゼノボットだ。

 シミュレーションで設計図が完成したら、今度はそれに従って細胞を組み立てる。カエルから採取した幹細胞を培養し、顕微鏡を見ながら切断・結合。すると細胞は生きているので、互いにくっつき合う——ゼノボットの誕生だ。

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ゼノボットはカエルの皮膚細胞(緑の部分)と心臓細胞(赤い部分)で構成されている。左はコンピューターが考案した設計図で、右が実物の姿だ
image credit:Sam Kriegman, UVM

・カスタマイズすることで多様なプログラムに適応

 今の段階ではただ泳いでいるだけだ。しかし今回はプログラム可能生体マシンの概念実証に過ぎない。さまざまな作業を行えるようカスタマイズできるので、応用の可能性はかなり幅広いという。

有害な化合物や放射能汚染の検出、海のマイクロプラスチック回収、血管内の老廃物の洗浄など、他の機械にはできないいくつもの応用が考えられます。(タフツ大学、マイケル・レビン)

 シミューレーションされたゼノボットの中には、抵抗を減らすためにボディ中央に穴が開いたものもあったという。

 このタイプは穴を貨物室代わりに使うことができるようで、そこに分子を収納して輸送するゼノボットも考えられるそうだ。

 将来的に神経系を組み込むことができれば、より複雑な動きを行えるようにもなる。そうなれば生物兵器としての利用もあり得るようだ。

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シミュレーションの動き(上)とまさに同じように泳ぐゼノボット(下)
image credit:Sam Kriegman, UVM

・驚異の自己修復能力

 生体であるゆえに、自己修復できるのもゼノボットの優れた点だ。ボディを真っ二つにしてみても、再びくっついて何事もなかったかのように稼働できる。

 作業を完了し、エネルギーを使い果たせば死んでしまい、いずれは完全に生分解される。”生きている”とはいえ、勝手に増殖するようなことはないそうなので、その点は安心だ。


UVM and Tufts Team Builds First Living Robots

・人工生命体は新たなるステージへ

 合成バクテリア、追加のDNA塩基を持つ半合成生物、精子と卵子を必要としない人工胚、ラットやウミウシの細胞から作られたロボットなど、これまでにも人工生命は開発されてきた。

 しかしゼノボットは自然界に存在しない形状で作り出されたという点でまったく新しい。ゼノボットが体現するのは、人工生命の新しいステージであるとのことだ。

 この研究は『PNAS』(1月13日付)に掲載された。

References:uvm.edu/ written by hiroching / edited by parumo
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