ヴェスヴィオ火山の大噴火の凄まじさ。犠牲者の頭蓋骨が破裂、脳がガラス化していたことが判明(イタリア)

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ヴェスヴィオ火山の大噴火の凄まじさ。犠牲者の頭蓋骨が破裂、脳がガラス化していたことが判明(イタリア)
ヴェスヴィオ火山の大噴火の凄まじさ。犠牲者の頭蓋骨が破裂、脳がガラス化していたことが判明(イタリア)

National Academy of Sciences / wikimedia commons

 西暦79年、イタリア・カンパニア州のヴェスヴィオ山が大噴火を起こした。今から約1940年以上前だ。

 その噴火で壊滅的被害を受けたのは、古代都市ポンペイである。火砕流の熱は凄まじく、逃げ惑う人々の体液を一瞬にして蒸発させ、その力で頭蓋骨を破裂させるほどだった。

 それだけではない。熱で脳組織がガラス化してしまった犠牲者もいたという。
・噴火による熱エネルギーは原爆の10万倍

 噴火による熱エネルギーは、広島や長崎に落とされた原爆の10万倍に相当すると言われている。

 吹き出した火砕流がポンペイやヘルクラネウムの街を襲い、あっという間に壊滅させたときの様子を、ローマの政治家ガイウス・プリニウスは、歴史家タキトゥスへ宛てた手紙の中で「松の木のような形の暗い雲が山の斜面を急速に降った」と書き記している。

 犠牲者のほとんどは有毒ガスと火山灰にまかれて窒息死したとされるが、2001年の研究の推定によれば、そのときのポンペイの温度は300度に達しており、その熱によっても住人はほんの数秒で命を落としただろうことが窺える。

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Art collection of the Huntington Library in Pasadena, CA/wikimedia commons

・体液が蒸発し、頭蓋骨が破裂

 また2018年の研究は、その熱によって人体の体液が蒸発し、頭蓋骨が破裂するという、被災地はさながら地獄絵図のような状況だったことを明らかにしている。

 その研究では、ヘルクラネウムの海岸沿いにあった舟小屋で発掘された100体ほどの遺骨から、赤と黒の残留物が発見されている。

 分析の結果、それは高濃度の鉄であることが判明。血液かどうかは断定できないものの、体液の痕跡と考えられると述べられている。

 さらに骨の破砕や頭蓋冠の破裂といった、極端な高温にさらされたときに生じる痕跡も確認された。破砕流によって脳の軟組織や体液が沸騰・蒸発し、頭蓋骨が破裂したのだ。

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P. Petrone et al

・520度の火砕流によって脳がガラス化

そして、今回『New England Journal of Medicine』(1月23日付)に掲載された研究では、1960年代にヘルクラネウムで発掘されたある犠牲者の頭蓋骨が分析されている。
 
 発掘当時、その遺体は木製のベッドに横たわり、火山灰に埋もれた状態だった。頭蓋骨の中にはまだ脳組織が残っていたのだが、そこには珍しい物質があった。

 研究グループによると、大抵の場合、そうした脳組織は高温によって鹸化(グリセロールと高級脂肪酸に分解)してしまう。ところが、この犠牲者の脳は融合してガラスになっていたのだ。

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Petrone et al/NEJM / 2020

・ガラスから脳や髪の毛の物質が検出

 これを分析したところ、脳内のトリグリセリドに含まれる脂肪酸が見つかったほか、人間の髪の毛に含まれる物質も検出。周囲の灰や炭からはそうした物質が発見されなかったことから、ガラスは脳が変化したものである可能性が一番濃厚であるとのことだ。

 周辺の炭化した木に基づく推定によれば、そのときの温度は520度に達していたそうだ。

 こうした発見は、「極端な放射熱は、体内の脂肪を発火させ、軟組織を蒸発せるほどだったことを示唆する」と論文では述べられている。

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頭蓋骨を埋める黒くガラス化した脳
image credit:Petrone et al/NEJM / 2020

References:nbcnews. / iflscience / arstechnicaなど/ written by hiroching / edited by parumo
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