真偽検証が間違っていることも。フェイクニュースへの警告は真実を報じるニュースの信頼性を貶めている(米研究)
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フェイクニュースがますます増えつつある昨今、ニュースの真偽を検証することがきわめて重要になってきている。
民主主義の根幹に関わる政治関連のニュースについては特に言えることで、こうした状況に対応するために、ニュースの真偽検証(ファクトチェック)を専門的に行っている組織が2000年代初頭から加速的に増えているという。
あるニュースがフェイクである可能性を告げる警告は、間違った情報が世間に広まってしまうリスクを下げることができるが、ここで問題が発生する。
そのフェイク警告自体に信ぴょう性のない場合もあるからだ。真実を伝えるという目的が、いつのまにか印象操作にすり替わっている場合もあるのだという。
アメリカでフェイクニュースとそれを正すフェイク警告に関する研究が行われた。それによると、フェイク警告も場合によっては悪影響を及ぼすこともあるそうだ。
・フェイク警告の信頼性の問題
フェイクニュースに関する警告の信頼性は必ずしも一貫していない。
FactCheck.orgやPolitiFactをはじめ、信頼性の高い検証を行っている組織もあるが、中にはバイアスを帯び、あまり役に立たない警告を出しているところもある。
例えば、「事実」を述べているニュースに対してフェイクであるとの警告が出されることがある。それがうっかりミスの場合もある。
だが、そうしたニュースを報じられては不都合な者たちが、その信憑性を貶めるために意図的にフェイクの警告を出していることもある。
またフェイク警告の内容が曖昧すぎたり、不正確だったりすることもある。
誰にでも間違いはある。過失により誤った情報を流してしまったとしよう。その誤った情報に対してのフェイク警告が出されたとする。すると、他に真実の情報があっても、全て誤っていると偏見を持たれてしまう。フェイク警告が印象操作に使用されてしまうのだ。
フェイク警告を出す側が必ずしも正義の味方とは限らない。真実を伝えるという目的だったはずなのに、いつのまにか、悪者を生み出すことに躍起になっていることもある。任を責め立てる恐ろしい顔をした天使こそが、悪魔の原型だったように。

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・フェイク警告の弊害
さらには、こうしたフェイク警告の存在がフェイクニュースに信憑性を与えることすらある。
人々が記事の信頼性の高さを保証する文言やフェイクニュースであるという警告に慣れてしまったとする。
すると、たまたま真偽の検証がなされてらず、そうした警告がないフェイクニュースを見た人は、警告がないのだから正しいのだろうと思ってしまうのだ。
特にSNSでは顕著で、自分では何も調べず、本文すら読むことすらなく、短い見出しだけでリツイートやいいねを飛ばしまくる。その何気ない行為が、正しい情報伝達を妨げている危険性を秘めている。
フェイクニュースの内容を検証し、それを発表することは、確かに必要なことである。だがその反面、警告自体が人々のニュースの受け止め方に影響していることを考慮しなければならない。
使い方を誤るとかえって悪影響を及ぼすリスクもあるのである。ゆえにフェイク警告が人に与える影響もきちんと研究しなければならない。

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・フェイクニュースや警告の有無は自分で体験した記憶を左右するか?
アメリカ、カールトン大学などの研究グループが『Political Behavior』(2月5日付)に掲載した研究では、自分で体験した出来事に関するフェイクニュースや、それに対する警告の有無が記憶に与える影響を検証している。
実験では、ネットで募集した434名の参加者に「映像処理における色の役割を解明することが目的」と告げた上で、ある政治テレビ番組を録画した4分間のビデオを視聴してもらった。
そのビデオでは、3人の政治家が医療保険制度改革についてそれぞれの意見を述べている。
視聴後、参加者には、そのビデオの内容に関する記事を読んでもらう。参加者が読んだ記事はどれも同じ構成だが、内容がわずかに異なっており、「映像に関する曖昧な内容」(対照群)、「政治家が話した特定の内容も記載」(真実グループ)、「一部の事実が変更された内容」(虚偽情報グループ)の3種類があった。
また、それらの記事は、内容の真偽にかかわらず、フェイクであると警告されているものと、されていないものがあった(つまり参加者は6グループに分けられていた)。
これらの記事を読んでもらったあとで、参加者にビデオの内容について質問し、内容を正しく記憶しているか、さらには間違った内容をきちんと見分けることができるかどうかを検証した。
その結果、対象群では、映像の内容の59パーセントをきちんと覚えていた。
しかし、虚偽情報グループでは46パーセントに低下しており、しかもフェイクの警告がなかった場合、実際にはなかった内容の33パーセント(対照群では18パーセント)までをビデオで話されていたと誤って回答していた。
なおフェイクであるとの警告は、記憶の定着をわずかに向上させるようで、虚偽情報グループでも警告があった場合は、内容の52パーセントを覚えていた。
一方、正しい記事は記憶の定着をうながすようで、真実グループでは、ビデオの内容の72~76パーセントをきちんと覚えていた。

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・誤ったフェイク警告は正しい記事の信憑性を損ね、記憶を低下させる
ただし、記事の内容が正しいにもかかわらず、それがフェイクであると警告が出されていた場合、記憶していたビデオの内容は68~70パーセントとわずかに低下した。
情報が正しいにもかかわらず、その信憑性を貶めて内容を疑わせるような警告は、その情報に記憶する価値がないという印象を与え、記憶するのが難しくなる。
これを「汚染された真実効果(tainted truth effect)」というが、今回の実験でもまさにそれが裏付けられた形だ。

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・ニュースは自らの体験の記憶すら左右する
この研究では、何かを体験したあとで、それについてのニュースを見ると、体験の記憶が影響を受けることを明らかにしている。
たとえば、ある出来事についての虚偽情報を伝えられると、その偽の情報を実際にあった出来事と認識することがある上に、実際にあった出来事すら分からなくなってしまう。
反対に、正しいニュースに触れれば、もともとの出来事をより確かに覚えていられるようになる。
それでもニュースがフェイクであるという警告が出されると、正しい記事ですら疑わしく思え、もともとの体験の記憶を歪める結果になる。
しかし、そうした悪影響は比較的小さいと考えることもできる。汚染された真実効果が事実を伝えるニュースを完全に侵食してしまうことはないようだ。
References:.springer / harvard/ written by hiroching / edited by parumo