〈企業・経済深層レポート〉 大手鉄鋼メーカー・日本製鉄“大リストラ”の理由 (2/2ページ)
「世界の鉄鋼需要が低迷しているため、世界の粗鋼生産能力は約4割が過剰状態なのです。そのため、日本や欧州では話し合いの場を持ち、生産の調整に努力しているほどです」(同)
ただ、世界鉄鋼協会が公表した’19年の世界粗鋼生産量は、前年比3.4%増の18億6990万トンとなり、3年連続で過去最高となっている。
「これは世界の市場動向を無視して中国が増産しているためです」(同)
中国の’19年粗鋼生産量は8.3%増の9億9634万トン。4年連続で前年を上回り、過去最高を更新した。世界市場に占める中国の比率は約53%となり、現状のペースで増産が続けば’20年には世界で初めて生産量が10億トンを超える可能性がある。
「中国も過剰生産を知り尽くしていて、一時は構造改革で減産にも取り組んでいたのですが、過去10%台で飛躍していた中国GDP(国内総生産)が昨年は6%台に落ちた。そのため中国は、国が鉄鋼増産という景気刺激策に打って出たのです。ただ、中国で余った鉄が安値で世界に輸出されれば、世界の鉄鋼業界は混乱することになる。日鉄の大リストラは、そんな暴走する中国リスクを睨んだ対策でもあるのです」(経営アナリスト)
さらに日鉄の大リストラには「国際競争力の強化」という目的もあるという。
かつて、日本の鉄鋼業は世界のトップランナーだった。しかし、今や韓国や中国の後発企業が技術力を上げ、日本を追い越している。
「例えば、韓国の鉄鋼大手『ポスコ』や、中国の中国鉄鋼最大手で世界2位の『宝武鋼鉄集団』は、収益力で日鉄の2〜3倍に達する。後発企業は最新設備を投入できるので、生産能力が格段にアップしているのです。日本製鉄は勢いある海外勢に対抗するため、大リストラで余剰設備を整理し、投資を集約することで収益力アップを図ろうとしているのです」(前出・鉄鋼業関係者)
宝武鋼鉄集団は、鉄鋼世界最大手の『アルセロール・ミッタル』(欧州)の粗鋼生産能力を’21年に超え、トップを狙う勢い。
「そうした中国勢などに日鉄が打ち勝つには、昨年、アルセロールとインド大手鉄鋼会社を共同買収したような動きを加速させ、さらに国内他社との再々編も視野に入れた動きが必要です」(同)
大リストラが吉と出るか、凶と出るか。