朝井まかて『グッドバイ』を生んだ創作作法を明かす (2/3ページ)

新刊JP

朝井:牢屋でしょう? 本当にやめてほしいんですけど、編集者さんからも「牢屋を書かせたら日本一」とか言われるんですよ。正直、ちっとも嬉しくない(笑)。

ただ、牢屋って想像のしがいがありますよ。密室ですし、中の匂いや冷たさなど、感覚的なものを書いているうちに、だんだんノリに乗ってきて……。

――歴史小説を書く時の題材選びについて教えていただきたいです。

朝井:以前から興味を持っていた人や事象に取り組むこともありますし、編集者さんから「こういうのを書きませんか」と提案していただくこともあります。提案していただいてから何年も過ぎて、やっと「そろそろやってみましょうか」となることもありますね。

――ちなみに今ご興味がある人やテーマはありますか?

朝井:今すでに着手しているものは別にして、「琉球」についてはいずれ必ず書いてみたいと思っています。私の祖母が琉球出身で、「まかて」という名前も祖母の琉球名から付けました。このペンネームでデビューしちゃった以上、これはもう宿命でしょうね。

書く前にあまり話すと違うことをやりたくなるので、ここまでにします(笑)。

――朝井さんが人生で影響を受けた本を3冊ほどご紹介いただければと思います。

朝井:ユクスキュルの『生物から見た世界』と、チェーホフの短編集。もう一冊は石牟礼道子さんの『苦海浄土』です。

『生物から見た世界』は、私たちの「心」は自身の胸の中にあるわけではなく、他者との関係性の中にあるということに気づかされます。一人ひとりの生きている「世界」は、違うのだということにも。そういう感覚を私ももともと持っていて、この本に出合ったことで確信を深めたところがあります。人間中心のものの見方や考え方を、優雅にひっくり返してくれる本ですね。

チェーホフは、もう「とにかく好き」としか言いようがない(笑)。「いつかこういう境地に達せられたらいいなあ」と思う作品が多々あります。いろいろな訳が出ていますが、沼野充義さんの訳が好きです。

「朝井まかて『グッドバイ』を生んだ創作作法を明かす」のページです。デイリーニュースオンラインは、カルチャーなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る