伊賀、伊豆、伊勢、伊予……伊藤さんのルーツ・旧国名につく「伊」の意味は?それぞれの語源も紹介

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伊賀、伊豆、伊勢、伊予……伊藤さんのルーツ・旧国名につく「伊」の意味は?それぞれの語源も紹介

日本人の苗字ランキング第5位に位置している「伊藤」さんの人口は約107万人で、日本人の約0.85%を占めているそうです(日本の人口を1億2,500万人で計算)。

そんな伊藤さんの苗字は「伊のつく国に根づいた藤原氏」が語源となっていますが、伊のつく旧国名(律令国名)は、伊賀(いが)、伊豆(いず)、伊勢(いせ)、伊予(いよ)、そして紀伊(きい)の5つ。

この「伊」にはどんな意味があるのでしょうか?国名の語源とあわせて諸説を紹介したいと思います。

まず「伊」の意味から

伊(い)とは古代の言葉で、単語の頭につけることで主に以下の意味を持ちます。

一、意味を強調する。
一、対象の清浄さ、神聖さを示す。

※他にもあります。

また、紀伊の伊(ゐ)は「居(ゐ)る」「率(ゐ)る」に通じ、主に以下の意味を持ちます。

一、ある所(居場所⇒在り処)。
一、対象がたくさんある(率いている)状態。

これを踏まえて、五十音順に各国を紹介していきます。

伊賀国(いがのくに)

現代の三重県北西部を指し、歴史が好きな方には「忍者の里」として知られています。

険しい山々に囲まれた土地なので、その様子を表わす「峨々(がが。寒山峨々たり、などと言いますね)」から「が」をとって縁起のよい「賀(ことほぐ、の意)」の字に当て換えたそうです。

つまり、伊賀とは「とっても険しい山々の国」あるいは「神聖なる山々の国」を意味しており、その神秘性は謎めいた忍者の里に相応しいネーミングと言えるでしょう。

伊豆国(いずのくに)

現代の静岡県伊豆半島を指し、歴史好きな方には「頼朝公の挙兵」「韮山反射炉」などのエピソードが有名です。

歴史的仮名遣いの「いづ(出づ)」は「出てくる」ことを意味しており、海に大きく突き出た半島の地形を表わした国名となっています。

また、「豆」の字は「頭」に通じ、鎌首を持上(もたげ)た蛇の頭を連想させる地形に「伊」を冠して強調。伊豆国は戦国の梟雄・北条早雲が下剋上を果たした土地でもあり、蛇のような野心に何かと因縁があるのかも知れません。

伊勢国(いせのくに)

現代では三重県の大部分を占める律令国で、世界中から億単位の参拝者が絶えない伊勢の神宮が有名です。

その語源は、国津神(くにつかみ。元から住んでいた神様)である伊勢津彦(いせつひこ)に国を譲らせた初代・神武天皇が、伊勢津彦の名を国名に採ったことが『伊勢国風土記』にあります。

勢(せ)とは文字通り「勢い」を表わし、そこに強調の伊を冠することから、非常に激しい神だったのでしょう。

事実、風の神である伊勢津彦は国を譲る時、決して戻らない証として激しい波風を立てながら東方へ走り去ったと言われており、以来、台風が東海・近畿方面を直撃しても、なぜか伊勢一帯だけは穏やかな天気であることが多いようです。

伊予国(いよのくに)

現代の愛媛県に相当する国で、その名を冠した伊予柑(いよかん)をはじめ柑橘類の名産地として、また『万葉集』や『日本書紀』にも登場する道後温泉も有名です。

「いよ」とは温泉や湧水を意味する「いゆ(出湧)」が訛ったもの、または道後温泉をはじめとする「湯」に強調の伊を冠した、などの説があります。

他にも「いよ」が「いゆ」からではなく「いよいよ(エスカレートしていく様子)」を意味する美称「弥(いや)」に由来するという説もあるようですが、この「弥」が何を対象にしているのか、という謎は残ります。

紀伊国(きいのくに)

現代の和歌山県に当たる国で、柑橘類の名産地として、愛媛県のライバルでもあります。また、歴史的には徳川御三家の一つ・紀州藩や世界遺産の熊野古道でも有名です。

国名は豊かな森林による「木(き)の国」を語源とし、それが方言で語尾が伸びて「きゐ」となり、当地を支配していた紀(き)氏の姓と、「多く(率)・ある(居)」状態を表わす接尾語「伊」を当てたと言われます。

ただし、紀氏は木(き)の国を「秩序立てて・治める(紀の漢字の意味)」ようにそう称したとも言われますから、国名と姓のどっちが先なのかは不明です。

まとめ・伊がつく国名の語源

伊賀国……神聖で険しい山々の国
伊豆国……海に突き出した頭(半島)の国
伊勢国……激しい波と風の神から譲られた国
伊予国……素晴らしい温泉が湧きだす国
紀伊国……木の多い、豊かな森林の国
※あくまで諸説ある内の一つです。

以上、「伊」のつく旧国名5ヵ国を調べて紹介してきましたが、苗字に「伊」がつく皆さんのルーツは、どこの国でしょうか。

他にも旧国名はたくさんあるので、興味が湧いたら調べてみると楽しいでしょう。

※参考文献:
角川日本地名大辞典 編纂委員会『角川日本地名大辞典』角川書店
(22 静岡県、24 三重県、30 和歌山県、38 愛媛県)
秋本吉郎『風土記(日本古典文学大系新装版)』岩波書店
大野晋ら編『岩波 古語辞典 補訂版』岩波書店

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